第2話 白銀は今日、蝉の夢を見る

何故だか分からないが、僕はどうやら生まれ変わってしまったようだ。


僕は夏休みの宿題をしていたという記憶までしか残っていない。


それ以降の記憶はもう・・・。 


僕は自分の足を見ながら言った。


「しょうがないよな、とりあえず今はこれで生きていくしかないよな」


僕はため息をつく。


まさか僕が蝉になっているとは。



蝉になってしばらく時間が経った。


木の中でのんびりしているとき、蝉になって一つ思ったことがあった。


それは、ほかのおすたちの目がヤバイということだ。


蝉達は約一週間の間に子孫を残さないといけないとは言えども、そこまで必死に鳴くかよ。 


みんな薬物してる目になっている。


流石のメスたちも引いてるし。



ミ~ンミンミンミンミ~ン


僕の隣の木で一際目立つ音で鳴いている蝉がいた。


「どうだこの音色、カッコいいだろ、子猫ちゃ~ん」


ミ~ンミンミンミンミ~ン


僕が聞いた感じ、普通の鳴き声だ。


「うるせぇ、とっとと消え失せろ」


オスの蝉があまりにもくどかったからなのかメスの蝉は、それはもうお怒りだった。


振られたオスはしくしくと帰って行った。


「はは、あいつまた振られたんだな」


「これで何回目だよあいつ、本当懲りねえよな」


その光景を見たオスたちは一旦鳴くのを止めて、振られたオスをバカにしていた。


そして、再び鳴き出した。


僕も早く鳴いて、彼女をつくらなければ。


じゃないと一人でポツンと孤独死してしまう。


それは悲しい、嫌だ。


そう思ったのだが、蝉初心者の僕にとってはあの独特な音の出し方がイマイチわからなかった。


そして頑張って、頑張り抜いて出た音がこれだ。


じーじ・・・じ。


それから音は出なくなった。

そして、僕の顔は真っ赤になった。


他のオスたちはどうやってミーンミーンと鳴いているのだろうか。


そんな疑問よりも、断然恥ずかしい気持ちの方が上回っていたため、僕はこの木から離れることにした。


しかし、ここでも困ったことが!


それは、飛び方が分からないということだった。


ここでも僕は勇気が出ない。

ずっと飛べなかった時のことばかりを考えてしまう。


すると、何者かが僕の背中を押した、僕は必死に飛ぼうとするが、羽は開かない。


ふと、後ろを見るとそこにはとても可愛いメスの蝉がいた。


その隣にはオスがいた。


僕はその蝉がとても懐かしく感じた。


何故だかは分からないが。


僕は下を見た。


そして、どんどん土に近づいているのを感じた。


もうすぐで死ぬのか、僕?


僕はそっと目を閉じた。







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白銀は今日も黒渦に身を隠す 凛陰 @ecoosme829

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