白銀は今日も黒渦に身を隠す

凛陰

夏の蝉編

第1話 白銀はいつでも告白を阻止する

僕は最低なやつだ。

今、クラス一の美人を僕はくだらない理由で降ってしまった。


クラス一の美人を振ってしまったから最低ではない。

あんなに勇気を出して告った人を僕の自分勝手な理由で振ってしまったからだ。


その理由とは好きな人がいるから


その一択しかない。


蝉が鳴いている木の下で、僕は平然と座り続けていた。


彼女は一人でしくしくと泣いていた。

何か独り言を呟いているが、蝉の鳴き声でその言葉はかき消されていた。


正直、僕はめちゃくちゃ気まずかった。

このまま立ち去るのもあれだしなー。

だから、僕は少し考え事をしようと思った。



僕には好きな人がいる。


しかし、その人は僕のことを単なる友達とでしか思ってもらえない。


もういっそ、思いっきって告ってしまおうかと思うが、まるでその勇気がない。



僕の今一番欲しいものは勇気だ。


その一択しかない。


しかし、僕の心は永遠にそれを拒否り続けている。



「早く、会いたいな」


そんな心細い声は、あっという間に蝉の鳴き声にかき消された。


ちなみに僕は彼女の連絡先とかを持っていない。


つまり、この夏休みが終わるまでは、奇跡が起きない限り彼女とは会えない。


「蝉よ、お前達には好きな蝉がいるか?」


こんな平然と鳴き続けているのにも関わらず、これでも一様愛着表現だもんな。


そして、蝉達は僕の言ったことに同意するように、一瞬鳴くのを止めた。


僕にも羽があったら、羽とお腹をこすりあわせて、彼女に思いを伝えることができるのになー


僕の妄想 

 

僕 「ミーンミーン」(僕はあなたのことが好きです!付き合ってください)

 

彼女「ごめん、ちょっと生理的に無理だわ、私」


彼女が言ったその一言で、僕の人生は幕を閉じた。


妄想をすると、気分が悪くなる。

話を蝉に戻すことにした。



そんな、蝉達を僕は憎んでいる。

それと同士に僕は尊敬もしている。


どうしてお前らはそんなすぐに相手に告ることが出来るのだ。


さっきお前達の羽とお腹があればなーとか言ってたけど、もし僕がお前達と一緒の羽とお腹を持っていても、使わずにぽっくり逝ってそうな気がした。 


僕の妄想


彼女「何、話したいことって」

僕 「・・・」

彼女「早く言って、時間無いんだけど」

僕 「・・・」

彼女「もういい、絶交よ」

僕 「・・・」


僕は白い灰となり、風とともに消えていった。


うわー、また変な妄想をした。


僕は頭を抱え込む。そして、話しを再び蝉に戻すことにした。


何故、蝉を尊敬しているかについてだ。


お前らがカップル成立するのにたったの一週間なのに対して、僕は二年と現在進行中だ。


そんなすぐに相手を告れる勇気がある蝉に対して、僕は勇気のない、蝉以下の存在だ。


時計を見ると、もう夕方になっていた。


告白されたのも夕方なのだけどね。


隣で泣いている彼女を置いて、僕は蝉達のいた木の影から夏の日差しが眩しい日なたへと出た。



僕は、白銀 修弥しろがね しゅうやという名前の公立中学に通う中二だ。


小さいころはみんなから可愛い、可愛い言われていたが、中学から一気に背が伸び、クラスの女子達からはキャーキャー言われる、いわゆるハーレムとなってしまった。


その分男子にも恨まれている。


まあ幸い、いじめとかはない。

それに、恨まれているといっても何人かは友達はいる。


性格は大人しいほうで、陰キャの部類に属する。


そして、この夏休み、僕は結構告られる回数が増えてきた。


全部振ったんだけどね。


降った理由はもちろん好きな人がいるから。


そして、その好きな人の名前が神楽 紫呑かぐら しのん見た目からにして、すごく可愛い子だ。

 

関係性としては家が近いだけ。

後は何にもない。


そして、僕が颯爽と家に帰ったのは言うまでもなく夏休みの宿題を終わらせるためだ。


今は夏休みの真ん中ぐらいだが、最後にだぁーとやるのは嫌なので、このぐらいの時にやるのがちょうどいいんだ。


僕は夏休みの宿題の一つの課題。数学に取り掛かった。

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