4年に1度の奇跡のような
同画数
4年に1度の奇跡
4年に1度奇跡が起きる日、そう願う。
私とあなたの娘とが、楽しそうにあなたがあ帰ってくることを待っている。家族3人いつもと同じような朝を迎え、過ぎる1日にそういえばと思い、記念日を思い出す。日常のひとつ、でもひとつまみの期待を溶かしたワクワクとで胸が苦しくなる。
今日が記念日だからと、今まで小さな喧嘩や不満など様々あったあなたとの関係をリセットするために、また新しく笑い合えるように昼間から夕食の下準備を始めた。
最近の貴方とはゆっくり話す時間が取れないから。朝あなたが家を出る時に言われた、今日話があると言う言葉。
あなたは不器用だから今までもそうでしたね。初めての4年に1度の記念日の朝、貴方はどこか不満そうでどうしたのかと聞いた。
「夜空けておいてくれ。」
酷く強ばった顔で告げる内容に不安を覚えた。夜開けておいてくれというのは夜起きて待っていろということか?私はその言葉の真意を探して訝しむ。
その夜帰ってきた貴方は随分コソコソしていいた。食事が終わって先に貴方がお風呂に入り、片付けが終わって私がお風呂に入り、あがったところでリビングに貴方がテレビも付けずにソファーに座っていた。ああでもない、こうでもないと狼狽えている貴方に後ろから声をかけると、ビクリと肩を揺らしていた。
「どうしたんですか」
「…つも、ありがとう」
あなたはその言葉が言えなくて酷く怖い顔をしていた。意を決したように一言感謝を述べそのあとは黙っまま。
テーブルの上には貴方の会社カバン、その中からピンクの花が見える。
「それ私にくださるの?」
「これは、…。」
「あら、私にじゃないの?会社に必要なもの?それならお手入れしなくちゃ。少し元気がないようだから。」
「いや、これは君のだ。」
「じゃあくださいな。」
「…君が今言っただろう?少し萎びてしまった。カバンの中にずっと入れていたの良くなかったのか。」
「あらいいじゃない。香りはとっても素敵よ?」
「君は…。」
「なぁに?」
また仏頂面で黙り。くすくすと笑いが込み上げてくる。
思い出す私も思わずクスクスと笑ってしまう。
私ももう慣れてしまった。朝ドラの面白さも、昼ドラのドロドロも毎日見るうちに。
さて、彼の大好きなビーフシチューのお肉は朝からことことしっかりと煮込まれ柔らかくなってきた。もう夕方か、かなり良さげな出来。料理の準備はもうだいたい出来た。さて少し一息でも。
そう言えば夕方に郵便局から電話が来るから対応しておいてと言われていたなぁ。
そんなふうに考える私の元にけたたましい電話音が鳴る。
「はいもしもし。」
『ちょっと、アンタ!早く別れなさいよ!雄太さんはアタシと付き合ってんの!』
ピッ。
思わず電話を切ってしまった。それにしても先程はなんとまあ非常識だが、勢いのある元気な若い女の声だった。家に帰ってきたら夫に聞いてみよう。
そんな決意をしてると再び電話がけたたましく鳴った。
「はい、もしも…」
『勝手に切ってんじゃないわよ!アン泣いちゃったのよ!アンタサイッテー!クソじゃん!このブス!てか、雄太の本命はナナだし!これ以上ナナの雄太にちょっかいかけたら許さないから!』
今度はまた違う女の声。
さっきの女より幾分酒やけしたような少し聞き取りにくい声だ。
取り敢えず再び、お引き取り願おう。
プツッ、ツーツー
と思ったら切られた。
そうか、アンちゃんは泣いたのか。
メンタル弱いな、それより本命がナナだったらアンちゃん愛人か?謎が謎を呼ぶ関係性だな。というか、さっきの感じだとナナって一人称か?
そんなことを考えているとまた電話が鳴った。今日電話すごいな。
「もし」
『ざっけんじゃねーぞ!雄太に付きまとって何様なんだよ!ナナから聞いたかんね!リナの雄太に手出してんじゃねーよ!』
アンとナナとリナは横の繋がりがあって、それでそれぞれを頼りにしてて雄太は全部の女と関係性がある?あれ?広告のチラシの裏に慌てて関係性を書留める。すごいな。それでまた女の家に牽制の電話を入れているという。これはあれか、私もアンとナナとリナの関係の中に取り込まれる?勧誘されている感じか?喧嘩腰だけど。しかし世の中には夫のように感情を表に出すのが苦手な人もいる。
暫し、無言で考えをめぐらせる。
『ちょっと!リナの話聞いての!あんたさっきナナのことも無視したみたいだし、生意気!』
「ただいまー。」
「おかえりなさい、雄大、ちょっと話があるんだけど」
ーーーーーーーーーーーー
私の大好きな昼ドラを体験できた、奇跡みたいな素敵な1日だった。
ある人のある日記より一部抜粋
4年に1度の奇跡のような 同画数 @doukakusu-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます