観察日記その4
十二月十五日(日曜日)(祝日)
仕事が嫌になった。早く辞めたい。私はこの頃口癖といえばこれくらいで、他はアンパン連呼の如く、カフェインを欲しているぐらいであった。
暇というワードには飛んで火にいる夏の虫。地獄耳を発揮しては無駄な運動を頻繁化しては疲れる悪循環に過ぎなかった。寝ることも、座ることも、眠気を押さえられずにパソコンに目を向かわせる。キー音に現実味が感じず、機械のように使い捨てのバッテリーのように。消耗品と化していく。
そういえば彼は最近どうしているだろうか。顔こそ合わせたことはないが彼はここ最近の私の生きがいだったように感じる。
「そうだ、会いに行こう!」
飛び上がって私は叫んだ。まるで有頂天になるぐらいに私はテンションが上がっていた。
事前の準備をし、私は寝た。
朝になり洋服に着替える。黒のニットに白のワンピース。毛玉は取ったが、まだ白い。何しろ私情で外に出ることなどほとんどないからだ。むしろ半年前の飲み会ピー事件が響いてるからである。どちらにしろ一目見て、周囲は察してしまうだろう。
こいつ……ニートだ。
(特に意味もない)変装をしてマンションを出た。サングラスを掛け、帽子を被り、もしかして有名人? なんて思われるのではないかと期待をして。案の定不審者扱いは受けかねたが、特段誰も気にしてくれなかった。これはこれで寂しい。結果、サングラスも帽子も外した。意味ないじゃないか。
友人伝いで彼のある程度の住所は分かったのだ。もちろんネットで実名公表はしない。ある意味適した使い方である。内緒だよ?
住所から特定出来る行動範囲は散策したが彼は見付からなかった。休日だから友人と遊んでいるのか、将又白衣タイムなのか。赤の他人の私にはわからないのだけれど、今日は見れないのだと確信した。会いたいのだけれど会えない。気が沈むような心持ちで、いつか友達の言った。推しに会えない悲しさがよく分かる一日であった。
垣根康孝生態記録 白鴉 @tyoyasyo
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