観察日記その3
六月三十日(日曜日)
今日は仕事がない。なぜなら休日だからである。ごく普通で当たり前のことだが、私には酷く辛いものだった。ただでさえ週一日も休みがいらないというのに、大ダメージは決め手の一撃必殺、週二日定休というものだった。
要するに私は仕事人間なのである。
今の仕事に違和感もストレスも抱えず、パソコンを打ち、気持ちの赴くままに人生意を押下している。彼氏こそいないが、上司には恵まれていると自信を持って言う私は、むしろ上司も仕事もない定休日など、有り余る時間を湯水のように捨て去る廃棄工場のように思えてしまうのだ。
腐っている。
友達にはよく言われた。今となっては上の空、はるかかなたの向こう側へ消え去る炎言葉。燃え切って、空気に消えて、去っていく。
パラッ。
戸棚から一枚の写真が飛び降りる。
九人の男女が生い茂る大自然をバックに写真を撮っている。
右後ろから順に、一茂、貞成、楓、未来、樹、夏美、早紀、一、私で時計一回り。
仲良くバーベキューで焼いた串刺し肉を片手に笑顔。奥、後方に亡霊がいると誰かが叫んだ。
そういえば彼はなんとなく山田太郎に似ていた気がする。雰囲気といい、柔らかな口元といい。妙にふわふわとした感じは激似といっても過言ではない。
ただ、今の彼には似ぬモサモサ頭がよく目立つ。すらっとした白衣と大違い、少し毛むくじゃらのセーター、どちらかというと目立つ方ではなく、陰でのそのそとついていくトトロ。多分そうだった。とりあえず心霊写真だったのだから、多分。
写真をアルバムに入れ、そっとしまった。冷蔵庫からビールを取り出し、一杯。
くうぅぅう!!
やっぱり飲むなら一人に限る。大勢で飲むのは気が滅入るからだ。そもそも飲み会乗りというものが私は嫌いだ。飲んで、酔って、てんやわんや。やらかしちゃったなんて日常茶飯事。新入社員ならまだしも、上司共々が煽っては持ち帰っていく光景は私には耐えられない。したがって私は飲み会に行かない。誘われても行く必要性の無さを相手が青ざめるまで熱弁し、声詰まりが聞こえたら、帰ってもいいですか、と一言。勝率十割、「はい」か「わかった」か「お疲れ様です」。中にはもう誘わないと吐き捨てて、本当に誘わなくなった社員もいるけれど、心を震わせ叫んでいる。
ありがとう。
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