第7話 そして二人は
「ああっ! 私だ! 戻ってきたんだっ!!」
オレンジ色の光に染まる森の中。少年は声をあげ、直後その違和感に気づいた。
すぐ目の前にいる黄金色の少女は、目をぱちくりとさせている。
「えっ!? あれっ!? なんで『私が居る』のっ!? じゃあ、『私』は一体……っ!?」
両手を見て、服装を見て、体をひねって尻尾を見て、サマーシャ(in少年の身体)は気づく。
「ト、トルネルだぁぁぁぁぁっ!?」
「あれま。そりゃ大変」
少女は無表情につぶやいた。
「……っ!? サ、サマーシャ? どこだ? なっ……何なんだここは!? 一体どうなったんだっ!?」
「落チ着ケ・騒グナ・装置カラ=離レロ」
「なんだこいつ! こっち来んなよ! しっしっ!」
怯えて後ずさりながら手を払う滑稽な『自分』の姿に苛立ちを感じつつ、しかし今はそれどころではなかった。
博士(in38のボディ)はするするとモニターに近づき、アームの先端でキーボードを叩く。
「ウーム・38マデ=巻キ込マレタノハ=何故ダ? ソモソモ=ぷろぐらみんぐサレタモノニ=過ギナイ=38ノ疑似意識ト・人間ノ意識ガ=入レ替ワルナド……オイ・チョット=ソコノ資料ヲ取ッテクレ」
38はふりかえる。しかし、そこには誰もいない。研究所の扉が開け放たれ、資料が風に揺れていた。
「アノ=ヤロウ……!」
プシューっと音を立てて38は後を追う。
騒動はまだ始まったばかりだった――。
― 黄金尻尾のサマーシャと天才博士の鳥飼進 終―
黄金尻尾のサマーシャと天才博士の鳥飼進 維夏 @i_na_tsu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます