シャッター音【2】
2人でゆっくり歩き、桜の1番行きたがっていたアネモネの花畑に向かった。2人の足取りはいつもよりゆっくりで、何となく手探りの会話をしていた。
「あ、あのさ…」俺がそういうのと被って桜も話しかけてきた。
「あ、私は後ででいいよ。大した話じゃないし」
慌てて話を切り出そうとするも、急に静かになったものだからどうしても上手く話せない。とりあえず口から適当に出てきた言葉を発した。
「えっと…どうしてアネモネが好きなのかなって聞きたくて…」
「アネモネが好きな理由?そうだねぇ…単純に可愛いからかな」
「やっぱり可愛いからだよね、当たり前のこと聞いちゃったな…」
「そうだ、理由はそれだけじゃないよ。花言葉が好きなの。
正直、俺は話の内容は詳しく覚えてない。ただ、こう語っている桜が美しくて。青空の下、色とりどりの花畑の中、髪をなびかせている桜が美しくて。その横顔に見とれていた。
小さな丘を登るとそこには一面に色とりどりのアネモネの花畑が広がった。白に、紫に、赤。どれも風にふわふわと揺れている。とても
園芸部の桜がしきりに学校で育てたいと言っていた理由もわかった。これは育てたくなる。
ふわふわと揺れるアネモネの中、桜は子供のような笑顔を浮かべて眺めていた。
「ねぇ秋、やっぱり1番可愛いのはアネモネだよね。ここの中で
「バラとかカーネーションとかポピーを差し置くのか…」
ちょっと
「なぁ、写真撮ってあげようか」
俺はそう言って持ってきた『魔法のカメラ』という名のインスタントカメラを見せた。
「インスタントカメラなんて持ってきてたの?いいね、雰囲気出るね」
テンションが上がった桜はとても嬉しそうだ。魔法のことは本当かどうか分からないので伝えなかった。
アネモネの花畑の中にいる桜を撮ることになった俺は、満面の笑みを浮かべる桜をファインダー越しに
そして、3、2、1--
パシャ
シャッター音と共にフラッシュがたかれる。
それとほぼ同時にアネモネの花畑の中、桜が倒れた。
セピア〜魔法のカメラ〜 沫雪 @awayuki23
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。セピア〜魔法のカメラ〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます