第4話 【ソレ】

「くそっ…ふざけるな…なんで君はすべてを持っているんだよ…不公平だっ…!」


金子はふらふらと立ち上がり、赤い石を掲げて右腕を変化させる


「特別なのは僕だけで良いんだ!君はいらない!」


赤い石の光が一層強くなり、右腕がうごめきだした


「うわっ!なんだこれは!勝手に…うわぁぁぁ!」


見る見るうちに金子の右腕が全身を飲み込み、【ソレ】は姿を現した


「ショロショロショロ…」


舌をチロチロ出しながらこちらを見ている【ソレ】は、蜥蜴のような顔をしており、両腕は鋭い刃物のようになっている


「なんだよこの化け物は…。」


現実なのにまるで夢をみているかのような光景に、頭がついていかない


「ギ…」


「ギャギャギャギャギャギャギャ!!!!」


ビリビリビリビリビリビリ…


叫び声によって大気が揺れている…


「ギ…ヤット…手ニイレタ…カラダ…」


「こいつ…喋るのか…」


「オ前ノオカゲ…感謝スル…」


「…だったら感謝ついでに消えてくれねぇかな…」


「オ前…苦シマナイヨウニ殺シテヤル…ソシテ喰ウ…」


「…流石にもう終わりかもな…」


また諦めるの?


さっきの声だ、頭に響いてくる


…俺がなんでこんな刀を持っているのか、何であんな動きができたのかも全然わからないし、なによりも、あんな化物、普通の高校生にどうすれっていうんだよ…。


君は普通なんかじゃない。僕のマスターだ。


…さっきからマスターってなんのことだよ、俺はお前なんか知らない!


僕は君の心だってさっきも言ったじゃん?つまり僕は君で、君は僕だよ。


…なにわけわかんないこと言ってんだよ!


それに君はさっき僕のことを【紅丸】って呼んだじゃないか。

つまり君は僕を知っているんだよ。


…俺はなにも知らない、でも知っているような気がする。


君は自分の思うままに身体を動かし、思うままに『僕』を振るえば良い。

そうすればあんな【偽物】には負けないよ。


…偽物?なんのことを言っているんだ?


あれは【本物】じゃなくて、【本物】の力を模した【偽物】ってことさ。


…本物だとか偽物だとか意味が全然わかんないんだが。


つまり【本物】である君に、【偽物】が勝てるわけないってことだよ。

あいつの胸にある赤い石を壊せばそれで終わり、簡単でしょ?


…お前が適当な奴ってことはわかった。


こいつがなんなのかわからないが、今は目の前の金子をどうにかしなきゃいけない

俺の思うままに身体を動かし、刀を振るえと言っていたな


俺は刀を構え、金子に向かって走った

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