第3話 謎の力

「僕の話をちゃんと聞いてくれない人にはお仕置きしなきゃね…。」


ブォォォォ…ボンッ!!


「ぐあっ…!」


気付いた時には俺は吹き飛んでいて、公園の外の壁にめり込んでいた


「がはっ…、なんだこれ…うっ!」


胃から込み上げるものを吐き出すと、あたりが赤く染まった

どうやら腹を殴られて壁まで吹き飛ばされた様だ

みぞおちに激痛が走り、うまく息もできない


「その血の量、どうやら内臓が潰れちゃったみたいだね、まだ力の加減がうまくできないんだ、ごめんね〜、でも、すごいでしょ?僕の力。」


意識が朦朧とする

身体にもうまく力が入らない


「苦しいでしょ?今まで助けてくれたお礼に、今すぐ楽にしてあげるからね。」


金子の右手の形が変わって、大きな刃になる


「さよなら、カズキ君。」


…あぁ、俺はこんなところで死んでしまうのか…まだまだやりたいことがあったのに…死にたくないな…


諦めちゃうの?


…誰の声だ…?


約束があるんだから、守らなきゃ。


…約束なんて俺は知らない。それに、約束があってももう無理だ…身体は動かないし息も苦しい、それに…もうアイツが俺を殺しに来る。


本当に諦めちゃうの?


…話を聞いてんのか、この状態でどうすれっていうんだよ。


久しぶりに力を貸してあげようか?


…いちいち上から目線でむかつく野郎だ。貸せるもんなら貸してみやがれ、まずはテメェをボコボコにしてやる。


ふふふ、さぁ、目覚めて、我がマスター。


…マスター?なんの話だ。でもなんだか懐かしい響きだ。この声も知ってる。お前は誰だ。


僕は君の心だよ、僕のことを呼んで?


「死ねぇぇぇ!」


金子が刃を構えて俺に向かってくる


「うおぉぉぉ!俺に力を貸せ!紅丸!」


俺は記憶の中に眠る【相棒】の名を無我夢中で叫んだ


「ぐうっ…!体が熱い…あぁぁぁぁぁっ!」


俺の体から流れた血が炎に変わり、形を変え刀身が赤い一本の刀と成った


「俺はまだ死ねないんだ!うぉぉぉ!」


俺は刀を握り、金子に向かって振り抜くと、辺りが炎に包まれ、炎の壁ができている


「なんだこれ!なにをした!」


金子は炎の壁を壊そうと刃を振り回しているが、形のない炎の壁は壊せない


「この感覚…初めて握ったとは思えない、とても懐かしい気がする。」


刀は俺の体の一部のように良く馴染む

まるで最初からずっと握っていたかのような錯覚に陥ってしまう


「うあぁぁぁぁ!!!ふざけるな!死ねぇぇ!」


金子は炎の壁を破り、俺に向かってくる


「…鬼纏【旋風】!」


ズバッ


反射的に体が勝手に動き、俺は金子の刃を受け流し、金子の胴体を斬りつける


「ぐおぁぁぁ!」


金子が崩れ落ちる


「…なんで俺、こんな動きができるんだ?」


自分でも不思議で堪らない

刀なんて握るのは勿論初めてだし、こんな技なんて知らない

いったいなにが起きているんだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る