第2話 報復

「くそっ!なんでこの俺があんな奴に…!」


「まぁまぁ、しょうがねぇって、あいつの動きはただの素人ってわけじゃねぇ、剣道は初心者でもなんか武術でもやってたんだろ。」


「そんなことはやられた俺が一番わかってる!そうじゃねぇ、あいつに負けて、あいつとの約束を律儀に守ってる俺にムカついてんだよ!」


「そんなこと言ってもなぁ、約束守らなかったらまたやられちゃうしなぁ」


「うるせぇ!あぁ〜腹立つ!」


「おい、見ろよ、あんな所に金子がいるぜ?」


「チッ…いくぞ!」


「あら、いつもみたいにやっちゃわないの?やっぱりお前も火神一輝が怖いかぁ」


バキッ!


「ぐあ!痛ぇ!」


「あぁ!?お前ぶっ殺すぞ?誰が誰にびびってんだよ、言ってみろ!」


「じっ、冗談じゃねぇか!悪かったから怒るなよ!」


「チッ…金子拉致るぞ」


「え?」


「拉致ってこのイライラをぶつけてやんだよ、行くぞ!」


「お、おぉ…」


「おい、金子ぉ、こんなとこでなにやってんだよ?」


「え…なんで…。」


「よくも告げ口しやがったな!ちょっとこっちに来い!」


「うわ!や、やめてよ!こんなことカズキ君が知ったら…」


「テメーが告げ口しなければバレねぇよ!来い!」


「た、助けて!カズキ君…!」


「お前があいつに助けを求めなければこんな痛い目にあわなかったんだ!」


「ち、違う!僕は助けてなんて言って…。」


「うるせぇ!」


バキッ


「ッ!痛い!」


「おいおい、顔はやめとけ、火神一輝にバレたらやばいって。」


「…カズキにバレるのが怖い訳じゃないが、親にバレたらやばいもんな。」


「うぅ…。」


----------------


「姫様!しっかりしてください!」


「カズキ…貴方に『この力』を託します…だから…生きて…」


「姫様!?姫様!しっかりしてください!!」


『オマエガヒメサマヲコロシタ』

『チカラガナイカラヒメサマハシンダ』

『オマエノセイダ』

『オマエノセイダ』

『オマエノセイダ』


----------------


「うわぁぁぁ!!」


…最近この夢ばかりだ

いったいなんだっていうんだ

姫様って誰だ…


♪〜♪〜


目覚ましが鳴ったという事は、俺は学校から帰って朝まで寝てたのか


「…っ!!」


宿題を忘れていた…まずい…


「ハァ…しょうがない、恭平に助けてもらうか。」


あいつに借りを作るのは嫌だな…気が重い…


------------


いつものクラスの窓側の一番前、あいつがいた


「すまん恭平、宿題見せてくれ。」


「お、珍しいな。全然良いよ、ほれ。」


恭平が鞄から宿題を出して俺に渡してくれた


「サンキュー、助かっ…」


「ただし!」


恭平が俺の言葉を遮ってきた


「お前のファンクラブの子と一緒に遊ばせろ!」


「なに言ってんだお前。勝手に遊べば良いだろ。」


「馬鹿野郎!お前が誘うことに意味があんだよ!俺が誘っても来るはずないだろ!少しは考えろ馬鹿!」


馬鹿はお前だ

正直俺はファンクラブなんてただのおふざけだと思ってるし、誰が入っているかも知らない


「残念だが、俺は誰がファンクラブに入っているのか知らな…」


「出席番号1番、藍沢桃!13番、佐藤絵里!21番、姫野涼香!」


「…は?」


「俺たちと同じクラスでお前のファンクラブに入っている女子だ!言っておくが俺は、お前のファンクラブに誰が入っているのか全員把握している!全員言ってやろうか!?」


「本当にお前は残念な奴だな。」


こいつの相手をしてると提出の時間に間に合わないから無視するとしよう


「ありがたく借りてくぜ。」


「おい!約束だからな!絶対だからな!約束破ったら絶交だからな!」


こんなことで絶交されるなら俺たちの仲もそんなもんだったんだなと諦めるしかないか

さて、もう時間がない、とっとと宿題写さないと…


ガラガラ…


「……。」


金子が教室に入ってきた

なんだか元気がないな


「おっす、どうした?元気ないな?」


「……。」


ん?無視してきた?


「おい、どーした?」


「…うるさい、もう僕に構わないで。」


「なんだよいきなり、なんかあったなら相談しろよ、友達だろ?」


「僕は君と友達になんてなった覚えはない!もう放っておいてくれよ!」


いつも大人しい金子が怒鳴り、クラス中がザワついている


「おいおい、昨日お前を助けた恩人に向かってそれはないんじゃねぇの?」


異変に気付いた恭平が近づいてきた


「誰も頼んでなんかないよ。カズキ君が勝手にやったことだろ。」


「…お前、本心でそう思ってんのか?」


「うるさいな!もう誰も僕に構わないでよ!」


金子が教室から飛び出してしまった


「金子!おい!」


「カズキ、ちょっと待て。」


「なんだよ!」


「金子の奴、多分剣道部の奴らに報復されてる。」


「え…。」


「俺の予想だけどな。明らかに様子おかしかったし、夏なのに長シャツで腕を隠してた。それに金子の鞄を見てみろ、こんなにボロボロだったか?」


こいつ、あの一瞬で気づいたのか


「だとしたら余計に放っておけないだろ!」


「ダメだ。お前が剣道部の奴らにやり返しても、やられるのは金子だ。」


「…じゃあどうすれって言うんだよ!」


「俺に考えがある。とりあえず、お前はさっさと宿題写さないと間に合わないぞ。」


真剣な恭平を久しぶりに見たな、なんだかんだ、こんな時に頼りになる男だ


「全部解決したら、ファンクラブ女子と遊ぶ+連絡先交換な。」


やっぱりこいつは残念な奴だった

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