第2話 豹変

「くそっ!なんでこの俺があんな奴に…!」


「まぁまぁ、しょうがねぇって、あいつの動きはただの素人ってわけじゃねぇ、なんか剣術でもやってたんだろ。」


「そんなことはわかってる!そうじゃねぇ、あいつに負けて、あいつとの約束を律儀に守ってる俺にムカついてんだよ!」


「そんなこと言ってもなぁ、約束守らなかったらまたやられちゃうしなぁ」


「うるせぇ!あぁ〜腹立つ!」


「おい、見ろよ、あんな所に金子がぼーっと突っ立ってるぜ?」


「チッ…いくぞ!」


「あら、いつもみたいにやっちゃわないの?やっぱりお前も火神カズキが怖いかぁ」


バキッ!


「ぐあ!痛ぇ!」


「あぁ!?お前ぶっ殺すぞ?誰が誰にびびってんだよ、言ってみろ!」


「じっ、冗談じゃねぇか!悪かったから怒るなよ!」


「チッ…金子拉致るぞ」


「え?」


「拉致ってこのイライラをぶつけてやんだよ、行くぞ!」


「お、おぉ…」


「おい、金子ぉ、こんなとこでなにやってんだよ?」


「……。」


「なに無視してやがんだ?火神カズキがついてるからっていい気になってんじゃねぇぞ!?」


「ブツブツ…」


「あ?聞こえねぇぞ!?」


ザシュ…


「え…?あ、あれ、痛い…痛い痛い痛いィィィ!?」


「お、おい!手…手が…落ちてる…!!?」


ザシュザシュザシュ…


「あ…」


ドサッ…


「うるさいよ…。」


「ひゃぁぁぁぁ!?く、首がァァぁぁあぁ!?」


「うるさい…お前も黙れよ」


ザシュザシュザシュ…


ドサッ…


「これが僕の力…ふふふ…」


------------


「姫様!しっかりしてください!」


「カズキ…貴方に『この力』を託します…だから…生きて…」


「姫様!?姫様!しっかりしてください!!」


『オマエガヒメサマヲコロシタ』

『チカラガナイカラヒメサマハシンダ』

『オマエノセイダ』

『オマエノセイダ』

『オマエノセイダ』


----------------


「うわぁぁぁ!!」


…夢か…最近この夢ばかりだ

いったいなんだっていうんだ

姫様って誰だ…


ウーウーウー


なんだか外が騒がしい

救急車にパトカー、消防車も出てる、なんか事件か?


♪〜♪〜


俺のスマホが鳴ってる

相手は金子だ


「もしもし?どーした?」


「かっ、カズキ君!!助けて!またあいつらが来た!」


「本当か!?場所は?お前今どこにいる?」


「3丁目の空き地に隠れてる…助けて…」


「待ってろ!今すぐに行くからな!」


通話を切ると急いで家を出て空き地に向かう

間に合ってくれ…!


「はぁはぁはぁ…ついた…。おい金子!どこだ!?」


人の気配がしない…間に合わなかったか…


「カズキ君、ここだよ。」


木の影から金子が出てきた


「なんだよびっくりさせやがって…大丈夫か?」


「うん、平気。」


…なんだかいつもの金子と違う


「お前本当に金子か?」


「いきなりどうしたのさ、当たり前だろ?」


そう言って金子は笑ってる


「そうだ、カズキ君に見せたいものがあるんだ。」


金子は隠れていた木の影からなにかを投げた


ドチャッ…


「なっ…なんだよこれ…。」


金子が投げたのは人の頭だった


「なにって、剣道部のエース様と仲間の頭だよ?」


金子は笑いながら答える


「これは…お前がやったのか?」


「そうだよ!僕強くなったんだ!カズキ君のおかげだよ!」


…俺のおかげ?


「カズキ君よく僕に言ってたよね、たまにはやり返せって。僕頑張ってやり返したんだ!」


「やり返したって…お前…。」


嬉しそうに語る金子を見て、俺は頭がおかしくなりそうだった

俺がやり返せって言ったからこいつは2人を殺したのか…?俺のせい…?

『オマエノセイダ』


「違う!俺のせいじゃない!お前が勝手にやったんだ…!」


「なにを言ってるのさ、君のせいだよ。」


「俺は殺せなんて言ってない!」


「でもやり返せって言っただろ?」


「ふざけるな!」


「さっきからなに怒ってるのさ、僕は嬉しいんだよ?」


「嬉しい…?」


「そうさ、僕は自分は弱くて惨めな存在だってずっと思ってたんだ。だからいじめられてもしょうがないって諦めてたんだ。でも、こんな僕でもやればできるんだって、証明できたんだ。こんな嬉しいことはないよ!」


「ふざけるな!人を殺して、なんの証明になるっていうんだ!人を殺して得る喜びなんて本物じゃない、お前は間違ってる!」


「君に僕の気持ちなんてわかるわけないよ。勉強もできて、スポーツもできて、喧嘩も強くて、誰からも必要とされている君に、誰からも必要とされていない僕の気持ちなんて…わかるわけないだろ!」


金子は右手でポケットからなにかを取り出して握っている


「この赤い石がある限り、僕はもう誰にも負けないし、馬鹿にだってされないんだ!」


金子の右手が赤く光だし、形が変わっていく


「これが僕の力だよ、カズキ君!」


金子の右腕は爬虫類の様な鱗に覆われ、まるで蜥蜴の腕のようになっている


「…なんだよそれ…。」


これは現実なのか…それとも夢か…?

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