紅と黒
sukeranke
第1話 夢
–カズキ…私の可愛いカズキ−
…頭がクラクラする、ここはどこだ
姫様…どこですか、姫様…
–この【力】で必ず【奴】を倒して…–
…なにも見えない、なにも感じない…
姫様…どこですか…
–貴方の手で…【私】を終わらせて–
…姫様!
ーーーーーーーーーー
「…またこの夢か」
頭が痛い、この夢を見るのは何度目だ
少し前から頻繁に見る夢
内容は覚えてないが、何故かこの夢を見ると毎回奇妙な喪失感と激しい喉の渇きに襲われる
この夢は一体なんなのか
ただの夢?それとも、俺になにか悪いものでも取り憑いているのか
「…とりあえず寝るか。」
今考えてもしょうがない
明日も学校だ
枕元にあるペットボトルの水を飲み干し、再度寝ることにした
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「うおぉぉぉ!!」
バチンッ!
竹刀の音が体育館に響き渡る
「一本!そこまでっ!勝者、火神カズキ!」
「すげぇ!またあいつの勝ちだ!」
「なんで剣道部じゃないのに剣道部に勝ってんだよ!」
「俺最後の一本早すぎて全然見えなかった!」
「くそっ!」
ドンッ!
面の向こうの相手は床を殴り、悔しがっている
「まさか竹刀の構えすら曖昧な奴に負けるとは…!」
うちの高校の剣道部は強くて有名だ
毎日毎日厳しい練習をして、何度も大会で優勝しているのに、素人に3回も負ければそりゃ悔しいだろうな
「ごめんな、でも約束は約束だ。2度と俺の友達に嫌がらせしたり、パシリさせたりするなよ?」
借りた防具を脱ぎ、体育館を出ると、入り口の前で涙目になりながら俺を見つめる奴がいた
「金子?」
「カズキ君!ありがとう!本当にありがとう!なんてお礼をすればいいか…。」
「お礼なんていいって、友達なんだし、助けて当然だろ?」
「うぅ…カズキ君…ありがとう…。」
「おいおい男がこんなことで泣くなよ…。」
俺はただ弱いものいじめが嫌いで、剣道部の連中がこいつをパシリにしてるのが見てられなかっただけなんだ
剣道部の奴らを懲らしめたのもただの自己満足だ
「それじゃあ俺はもう行くわ、またなんかあったら言えよ?」
「カズキ君、ありがとう!でも僕も強くなるよ、カズキ君みたいに!」
「おう、それじゃあな!」
俺は強くなんてない、強くないからあの時だって…
あれ、あの時ってなんだっけ…
自慢じゃないが、今まで誰かに喧嘩で負けたことはない。『なにか』を守れなかったことなんてないはずだ
それならこの悲しい気持ちはなんだ…まただ、頭が痛い…
早く帰って今日はもう休もう…
俺は足早に帰り、家に着くなりベッドに倒れ込んで眠りについた
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