第7話 四人の遭難者
翌朝、心地よい南風が、かしこねの潮をまたぐように、丘の上に吹き上げた。目を覚ました
「えいせいの向こうには、海のような大陸が広がっている」
朝の光が茜に輝く水平線に広がると、一気に夜が明けた。昨日の
客人は、
丘の上は平らかで、四方の見渡しが良かった。朝日の方向に、静かな潮が流れている。
「見よ、あれがかしこねだ。堂々と流れておることよ。」
すると、傍にいた
「よく見ておくことだ。潮の流れは、何本もの筋が重なっているじゃろう。真ん中で、渦を巻きながら進んでいるものがあれば、振り向きもせずに真っすぐ進む潮もある。」
八潮は、
「後ろを振り向いてみよ。遠くに島影が見えよう。あれが、ふたつ島である。この島とかの島の間を流れているのもかしこねである。どうだ、それぞれの島にぶつかった潮は、渦を巻いて、逆流しておるぞ。毎日、眺めていても飽きぬくらい、変幻自在である。じっくりと眺め、頭に入れておくことじゃ。」
わずかの時であったが、
吹き上げる南風が、潮の香りを運び、最も景色の良いところに屋形はあった。中に入ると、島の住人が中から出てきて、恭しく出迎えた。昨年、帰れずに逗留組となった異国人も中にいた。彼らは、やっと戻れると安心したのか、
屋形の中に入ると、
島に常駐している水主たちは、海路を失った異国人を集めて連れて来た。中のひとりが皆を代表して深々と頭を垂れて礼を尽くした。
「冬が過ぎ、ようやく南風がこの島にもやってきました。待ちに待っていた、お迎えの船がやってまいりました。しかも、
余りにも丁寧な挨拶に、
「われら四名の者、方々にて浮き縄の海に迷い、命を失わんとするところをお救い頂きました。冬の間をこの島に留め賜いて、生き延びたところでございます。本日は、
四名の遭難者は、再び、深々と頭を垂れた。
「よくも無事で、この島においでになりました。
一同は、みんな腰を下ろすと、自分のことを話し始めた。命を救われたことへのお礼の気持ちを、素直に現したかったのである。
「われは、昨年の夏からここにお世話になっておる
歳の頃は、五十を超えた初老の海人が口火を切った。
「わしは、
閩聰は、その時のことを思いだしたのか、たちまち、孤独と恐怖に戦う漁師の顔に変った。
「わしも漁師の端くれ、黒潮のことは、小さいころから聞いてはおりました。「
皆々、海の恐さを知るものばかりである。閩聰の気持ちになって聞き入った。
「大海原を三日ほど彷徨いました。運良く、黒潮に沿って小さな島に流れつきました。浮き縄のことは聞いたことがありましたので、島伝いに黒潮に乗り、なんとか命だけは助かったのです。ところが、北に向かうばかりで、帰る海の道が分かりません。」
「三人目の孫が生まれたばかりの時でした。小さな
「何とかして帰りたいとの思いで、いくつかの島を渡りましたが、大陸に戻るには、どの島でも「
「西流れに乗って、もっと北の
といわれまして、
扉の向こうから、かしこねが温かい潮風を運んでくると、部屋の中をぐるりと回って外に出た。だが、閩聰には、まだ話すことが残っていた。
「ところが、
一緒に話しを聞いていた
「おお、なんと、
と、
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