第5話 海流かしこね
「おお、
「
「
と言うと、
次の瞬間、大波は、船をふわりと持ち上げて通り過ぎた。
「
と言って、にんまりと笑った。
一行は、のんびりとした春の海とたなびく風を存分に楽しみながら、先日、通った弔いの海路を南下した。
「
「ありがたき、お言葉に心痛みます。われらが前の
「
「
「いかにも、
「浮き縄の島々か。面白いことを言うの。」
「ただし、航海は
「ほう、やはり浮き縄もまた、姫神族であるのか。
好奇心の旺盛な
「
「
「われらは、黒潮の民、浮き縄の民でありますが、その中でも奄美は、特別で御座います。」
「なんと、奄美は特別であると言うか。」
「
「ほう、わしらは、あめつちと言うて、恵みの雨の事をアメとかアマとか言っておる。南方では、海のことをアマと言うのか。いずれも命の源であるな。」
「
「それで、毎日、潮の道を探っていると言うのか。」
「いかにも、さように御座います。夜の海にも出て、星の位置と黒潮を眺めております。潮の道は命の道でございます。」
奄美の中でも、黒潮が横切るのは、トカラ列島の海域である。黒潮は、与那国から奄美まで、一度も浮き縄の島々を横切ることはしない。真っすぐに北上した黒潮は、ここで、東に大蛇行し始めるのだ。
「わしらは、
「なるほど、
「さようでございますが、われは
「なるほど、
「黒潮の流れに沿って、
「なるほど、北の海にアツミ衆あれば、南の海に
「まだまだ、ありますぞ。これから向かう「ひとつ柱島」や「ふたつ柱島」、さらには、われらが拠点にしております知佳島の、そのまた
「さすがに航海族であるな。聴いているだけで、夢見心地であるぞ。」
「われは、つくし島の西を流れる黒潮の分流を追って知佳島に本拠を置いております。ここから東に流れるかしこねと、北に流れる精衛の潮を見定めるのが、わが
「それで、
「
「西の海、南の海に海路とな。
「はい、西の海の向こうには、大きな陸地が海のように広がっております。」
「
「
「確かに、今は、のどかであるよな。それで、昆殿は、この海の番人であるのか。」
「さようにございます。奄美で別れた黒潮は、つくしの島の西を北に向かって流れ、知佳島の辺りから、東西に分かれております。一つは、ひとつ柱島とふたつ柱島の両脇を北東にゆっくりと流れる潮でわれらはかしこねと呼んでおります。もう一つは、北上しながら
「かしこねとは、この響きの神島を通り、
「いかにも、さようでございます。
「そうであったな。あの時は、
途中、久治良は、岡に上がると、真水の入った筒を抱えて戻ってきた。また、海に潜っては、飛び上がって喜んでいる。
しばらくすると、
「うぉぉぉん、うぉぉぉん。」
そろそろ、このあたりで、船を回して、かしこねに乗れと言う合図である。
すでに、ひらの島の近くまで、ずいぶんと南下した一行であった。
「
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