第291話
~ハルが異世界召喚されてから12日目~
<帝国領>
ドルヂと同じくらいの体格に片目には眼帯をした帝国四騎士の1人シドー・ワーグナーが座っている。額にある大きな傷痕は戦いの中で強くなった証だ。
その隣には先程ダンジョンで会ったもう1人の帝国四騎士、赤い髪の少女ミラ・アルヴァレス。
そして、ドルヂの身体を眺めている無精髭を散らし、チャラついたこの男。クリストファー・ミュラーも帝国四騎士の1人だ。
クリストファーはドルヂの身体をまじまじと眺めた後、ドルヂの顔を見上げて言った。
「また大きくなった?」
「……いえ、以前と変わらないです」
親戚のおやじかよ、というツッコミをドルヂは心の中でした。
「えぇー!そうかなぁ?僕は大きくなったと思うんだけどなぁ?」
クリストファーはそう言うと、ミラの隣に用意された椅子に腰かける。
ドルヂは大きな身体を曲げてジュドーの耳にそっと囁いた。
「なんで四騎士が揃ってんだ?」
この会議はあと4日後に迫った戦争の為の会議だが、昨今の敵国の動きや戦力を知らせるために四騎士が呼ばれたのだとジュドーはドルヂに説明した。ドルヂの他にもシドーの軍に配属されている端正な顔立ちのノスフェルとウェーブのかかった髪を腰まで伸ばして妖艶で眠たそうな目、スリーピングアイの持ち主であるベラドンナが整列している。
「でもサリエリ様がいないが?」
ジュドーは頭を抱えた。
「サリエリ様は現在獣人国の作戦を実行している最中ですよ!」
そうなの?っとまるで初耳のような反応をするドルヂにジュドーは頭痛がし始めた。
すると執務室の扉が開かれる。
現れたのは帝国軍の総司令クルツ・マキャベリーとオレンジ色の髪を揺らし、まるで人間を憐れんでいるかのような目付きをした色白の男が入ってきた。
ジュドーはその男を知っている。
──たしか、聖王国の……
ジュドーはその男に目を合わせると背筋を凍らせた。ドルヂもそれを感じる。そして、自分達の主であるシドーがその男に威圧すると、その部屋を押し潰す程の圧力をその男はかけた。
ジュドーはこの部屋で立っているのがやっとの状況だ。
「ぅっ……」
ジュドーは声を漏らす。ドルヂがオレンジ色の髪の男に詰め寄ろうとしたその時、マキャベリーが遮った。
「挨拶はすみましたか?」
マキャベリーはシドーに言ったようだ。シドーは頷く。マキャベリーは連れてきたチェルザーレを見た。チェルザーレは述べる。
「全く酷い歓迎であったな」
ドルヂは、
「そっちが……」
口を開こうとしたが、シドーに遮られた。
「よせ」
その言葉でドルヂは完全に黙った。
クリストファーがにやにやと笑っている中、マキャベリーが沈黙を破る。
「この方はチェルザーレ・ゴルジア様です。この度、聖王国から帝国へと亡命し、帝国四騎士に就任しました」
「え?」
ジュドーは声を漏らすと同時に、クリストファーは笑い声を上げた。
「ほっ」
ドルヂは自分の目標である四騎士にどこぞの馬の骨が就任したことに沸々と怒りを込み上げるが、先程シドーに制された為、なんとかそれを抑えた。
そしてドルヂは、ある疑問が浮かんだ。
──四騎士の内の誰かがコイツと入れ替わるってことか?それとも五騎士になるとか?いやでも四騎士に加わるって言ってたよな……
そんなドルヂの思考を読んだかのように、マキャベリーは説明する。
「四騎士に名を連ねる内の1人、サリエリ・アントニオーニを降格させます。現在の獣人国での失態からして降格は妥当ですが、彼は帝国を裏切りフルートベール側へついた可能性もあります。その場合私に接触を試みると思いますが、虚をついて皆さんのところに現れるかもしれません。その時は十分に気を付けてください」
現四騎士の者達は微動だにしないが、ドルヂはジュドーとノスフェルを見やる。ノスフェルに関しては自分の師に当たる人物だ。しかし、ノスフェルも四騎士と同じく冷静に状況を整理しているようだった。
ジュドーはこの事実を聞いて狼狽している。やはり、この部屋の中で気が合うのはジュドーだとドルヂは再確認した。
マキャベリーは皆が落ち着くのを待ってから話を続ける。
「事の発端は、皆さんも知っての通りフルートベールの剣聖が復活したことから始まります……」
マキャベリーは今迄の経緯を、自分の失態を含めて説明した。
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