第150話
「各員!もう一度持ち場につき、制御とコントロールの準備を!」
スピーカーから平田の声が流れる。
準備できました。
完了です。
いつでも……
同じ口上がスピーカーから流れてきていたが突如、チェロの弦を高音から低音にかけて何度も掻き鳴らすような警告を示す音が流れる。その音に合わせてこれまた警告を現す赤い電灯が回転し始めた。
「来たか……」
平田は持っているペンを折った。
「警備は何をしている!?」
ザザァとスピーカーから雑音が流れてから切羽詰まった声が聞こえてきた。
「た、只今交戦中です」
雑音と共に短機関銃であるステアー TMPの音も聞こえる。
「く、くそぉぉぉぉぉ!ぅぁぁぁぁ!!」
断末の叫びとくぐもった雑音を最期に何も聞こえなくなった。キミコは目を閉じた。
地下施設に潜入したミライはたまに光が下からさす狭い通気孔をほふく前進で進んでいる。昨日と同じところまで誰にも出会わずに潜入することができた。しかしこれ以上奥に進めなかった。ミライは通気孔口から通路を観察する。何人かの武装した護衛が歩きながら談笑していた。
ミライは思案する。
目的地である実験室へ行くには数人の研究者しか持っていないカードキーが必要だったのが昨日の潜入でわかったのだ。白衣を着て何人かにヒプノシスという催眠魔法をかけて潜入した。キーが必要だと判明してから色々な部屋に入っては目的のカードキーを漁っていた。しかし、どこにも見つからなかった。そうこうしているとスーツ姿でサングラスをかけた、見ただけで護衛とわかる男に見つかってしまった。施設からは上手く出られたが、追ってきたその護衛と地上で戦うこととなってしまった。その護衛のせいでミライはステッキを落としたのだ。
そんな昨日の失態をミライは省みながら通気孔口から通路へ降り立ち、談笑している護衛3人の頭上から攻撃を仕掛ける。
真ん中にいた護衛を直ぐ様、魔法で眠らせた。両脇にいる2人の護衛は1人は仲間に報せ、もう一人は持っている短機関銃をステアーTMPをミライに向けた。
しかし、いくら短機関銃と言えどミライに懐に入られては使い物にならなかった。ミライは護衛の腹部に掌底をくらわせ、もう片方の手で持っているステッキを短機関銃に向けて魔法を唱えた。
「ウィンドカッター」
短機関銃はバラバラに解体された。すかさずミライは護衛にステッキを向けて睡眠の魔法を放つ。
この時ちょうどサイレンが鳴り響いた。ザザァと、残る1人の護衛が持っている無線機が音を立てている。
「警備は何をしている!?」
「た、只今交戦中です」
状況を伝え終えた護衛は短機関銃をミライに向けて撃ってきた。ミライの瞳孔が開く。
眼にも止まらぬ速さでミライはステッキを振っている。鉛弾が貴金属とぶつかり合う音と発砲音が通路に響く。ミライは至近距離から発砲されている短機関銃の弾を全て弾き返している。
「く、くそぉぉぉぉぉ!ぅぁぁぁぁ!!」
弾を防がれ、徐々に近付いてくるミライに護衛は恐怖を感じ取った。そしてステッキが機関銃に触れると銃はけたたましい音をたてながら爆散した。ミライはその爆発に構うことなく魔法を唱えて護衛を眠らせた。
ミライは一息ついたが、続々とくる応援部隊が同じ短機関銃でミライに攻撃を仕掛けてきた。
ミライは銃弾を風属性魔法で反らし、狭い通路を埋め尽くす応援部隊に掌を向けて唱えた。
「ウィンドスラッシュ」
無数の風の刃が装備している銃や防弾チョッキを切り裂いた。そのことに驚いた者達にミライは接近して次々と眠らせていく。
静かになった通路は赤い回転灯だけがそこを彩っていた。ミライは一息ついたが──
ドサッ
天井にある通気孔から何者かが降ってきた。慌てたミライはステッキを落ちてきた者に向けると、
「……なんで貴方がいるの」
着地に失敗したナツキは腰に手を当てながら答えた。
「えっと……心配だったから」
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