第32話 閑話休題

名前に自分の趣味を持ち出すなんて。

どうかしてる。いや、良い、別に。

自分以外であれば風流だといって流せる。

でも、しがらきって呼びにくいし言いにくい。


おかげで学生時代誰にも手をつけられてこなかった

ありがたくも「貴重な」名前だ。

みんなこれも呼びにくい苗字で呼ぶはめになる。


珍しい姓名は比較的覚えられやすいのに

なんで、こんなどこもかしこも珍妙な名前なんだろうと、小学校卒業した頃には思い始めていた。



母はサラという名前にしたかったらしいが

祖父は皿は割れるからいかん、とか言う理由で

却下されたらしい。

焼き物だって割れ物じゃん。

サラの方がよっぽど可愛げがある。

いいや、愛想の無さを名前のせいにしちゃいけない。


白木さんは私の事お嬢っていうし、

それに倣ってだいたいおじさん方はお嬢って呼ぶ。

かたや女性陣は各々好きに呼んでくれる。

スミちゃん、シガちゃん、スミエちゃん

エトセトラ エトセトラ。


まともに名前を呼ばれたことがない。

公的機関でしか呼ばれないこの正式名称。

1度酷い目にあった。


名前を迂闊に霊に教えてしまった時があって

その時はさすがに私も意識が無くなったから

詳しくは知らないが

引っ張られたらしい。彼岸に。

割と初期にやらかした失敗で

それを助けてくださったのは掌円和尚らしい。


和尚から、名前は自分を自分としてこの世にとどめておく為の

重石でありお守りだと教えてもらった。


霊は実態を持たないから名前を知って

その名前を持つからだに入り込もうとする。

私の体質は特に入り込みやすいらしく、

だから絶対に教えない事と念押しされた。

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