1 記念すべき第1作は手探りのドタバタ状態

どれから始めてもいいのだけれど、記念すべき第1作目からまいりましょう。

 

【嘘から出たまこと】SFPエッセイ001

https://kakuyomu.jp/works/1177354054892340431/episodes/1177354054892340465

 

すでに読んでいることを前提に書くので「ネタバレ」など一切気にせず、どんどん内容に触れます。気になる方は先に読んでくださいね。数分あれば十分読めるサイズですので。

 

さてこれは「虚構エッセイを書いてみようかな」と書いた10分後くらいに「お題」が届いて、その流れであたふたと書き始めたもので、書いている本人も「虚構エッセイってなんだ?」ということについて方針も確信もなく書いています。なので、そんな混乱ぶりが伝わってきます。虚構エッセイってこんな感じだなというのが掴めるのはもっと先の話なので、初期の作品はそういう試行錯誤をチェックするのもいいでしょう。

 

お題は【嘘から出たまこと】。「嘘」とはなんだろう。それが「まこと」になるってどういうことだろう。そんなことをつ考えてしまいますが、あまりそこで立ち止まらない方がいいことを経験上知っています。人からお題をもらって、それを作中のどこかに使って書く、というオンラインプロジェクトをその時点ですでに10年近くやってきており、400編あまりの作品を書いていたので、即興的に書く方が自分には合っていることを知っていました。「書き出す前に思いつけるものなんて、その程度のものだ」というのが、個人的な感触です。

 

もちろん、ここは人それぞれ自分のスタイルがあると思います。事前にプロットやらなにやら決めないと書けないという人はそうすればいいと思います。ただ、原稿用紙にしてたかだか数枚程度のエッセイについては、さらさらっと書いてみてから推敲する方が向いているように感じます。というわけでお題だけじっと睨みいつけてるよりも、とりあえずなんでもいいから書き始めてみる方が面白い展開がある、とぼくは考えています。

 

さて。この作品では、ある種の時事ネタがベースになっています。

 

一つは「STAP細胞はあります!」という名言と、その発言者に対する人々の賛否両論の反応です。発言内容に対する反応というよりも、単純に彼女自身に対するファンとアンチの反応が面白かったことを記憶しています。


もう一つは「イラクには大量破壊兵器がある」という、後になってまったくの嘘だったことがわかる言葉。その大義名分のもとに世界中から軍隊が派遣され、一国の政府を倒してしまったというとんでもない事件です。これは時事ネタというには古すぎますが、裏の取れない事象について「〜〜はあります!」と断言するという点で連想したものです。

 

この二つはお題に含まれていていた「嘘」の例として取り上げたわけです。

 

ちなみに「12月14日に炭焼き小屋」でというのは、忠臣蔵の吉良上野介と、サダム・フセインの両方にかかっていますが、こういう小ネタを盛り込むあたりが、「虚構エッセイってどう書けばいいんだ?」と手探り状態の作者の不安感を反映していて微笑ましいですね。

 

さてこれらを「人類虐殺兵器はあります!」というセリフに変換し、舞台を国際連盟の時代に置き、ただし国名などはふざけたダジャレの架空のものとなっています。「モリアーティ」(©️コナン・ドイル)だの、「スカトロフィア」(下ネタ)だの、こういう小ネタも作者の不安感の反映といっていいでしょう。今から読み返すと赤面ものです。

 

とまあ、前半は言葉遊びとふざけた社会風刺っぽい印象でお遊び感満載ですが、後半でちょっとしたひねりが入ります。結局「たった一発で一つの都市を壊滅せしめ、十万人単位の命を奪い、爆発後も長期にわたって人々の健康を蝕むおそるべき兵器」というのは、21世紀の我々はよく知っているもので、それは実在し、ここ日本で2回も実際に投下された兵器にほかならないことがわかります。

 

だとすると「人類虐殺兵器はあります!」といういかにも「嘘」くさいセリフは時代を経て「まこと」になってしまったことになります。国際連盟の時代には荒唐無稽でSF的な妄想に思えたアイデアが、21世紀の我々からすると笑えない現実であること。逆に言えば、現時点で荒唐無稽でSF的な妄想に思えるアイデアも、未来において荒唐無稽であるとは限らないと言い換えてもいいでしょう。

 

ということでお題【嘘から出たまこと】を消化した、というのがこの作品です。

 

第1作目はこんな調子でドタバタと書きましたが、いくつかの発見があります。

・架空世界で好き放題遊べる。

・現実の世界との接点は仕掛けとしてほしい。

・時事ネタは現実世界との接点のひとつ。

・時事ネタや言葉遊びだけでは弱い。

・同時代の読者が読んで「あ!」と気付くネタが仕込めると面白い。

・「書き手」が見えないとエッセイっぽくない。

などなどです。

 

こんな調子でSFPエッセイの企画は始まりました。これに続く試行錯誤期間もとりあげていきますが、だいたい安定してきてからの「大鉱脈発見!」の感覚についても紹介してまいります。「あの作品についての解説を読みたい」などのリクエストも受け付けます。読者のみなさんとライブにやり取りしながら書き進められたらと思っています。お気軽にどうぞ!

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