あなたも書ける!虚構エッセイ入門
高階經啓@J_for_Joker
はじめに 虚構エッセイの世界へようこそ
「虚構エッセイ? なんだそりゃ?」
とあなたはいま思っていませんか? ごもっともです。エッセイというのは通常ノンフィクションの領域のものだからです。例えばWikipediaでエッセイについて調べると「随筆」という項目が見つかり、冒頭の概要にはこんな風に書いてあります。
随筆(ずいひつ)とは、文学における一形式で、筆者の体験や読書などから
得た知識をもとに、それに対する感想・思索・思想をまとめた散文である。
随想(ずいそう)、エッセイ、エッセー(仏: essai, 英: essay)などとも
いう。「essai」の原義は「試み」であり、「試論(試みの論文)」という
意味を経て文学ジャンルとなった。
https://ja.wikipedia.org/wiki/随筆
そう。筆者の体験談がベースになっていたり、いまこうしてWikipediaを参照したように本や人との会話などから仕入れた知識がベースになっていたり、そんなところから書き起こして、それをめぐって考えたこと、連想したことなどを書きつけたものがエッセイです。先の引用の続きを読むと
ミシェル・ド・モンテーニュの『エセー』(1580年)がこのジャンルの先駆
者であり、欧米においては綿密な思索を基にした論文的なスタイルを念頭に
置いてこの語を用いることがあるが、日本においては後述する江戸時代後期
の日記的随筆のイメージもあって、もうすこし気楽な漫筆・漫文のスタイル
を指して用いることがある。
と記されており、日本語で「随筆」と呼ぶものと、欧米における「エッセイ」は若干ニュアンスが違うようですが、ここではそのあたりを厳密に区別することはしません。まあだいたい同じようなもの、筆者が何かを見聞きして、それを起点にあれこれ考えを巡らせたことを書きつけたもの、くらいにとらえましょう。
しかし、だとするとエッセイは基本ノンフィクションに整理するのが自然です。虚構(フィクション)というのは辞書的には“文芸作品を書くにあたって,作者の想像力により,実際にはないことを現実にあったことのように真実味をもたせて書くこと。また,その作品。”となっており、「虚構エッセイ」という言葉は矛盾をはらんでいるように見えます。
そうなんです。
2014年の年末のある日、「虚構エッセイ」という言葉を思いついた時は一種の言葉遊びとして「なんか面白そうだな」という程度の感想しかなく、軽いジョークとして「人からお題をもらって虚構エッセイを書くというのは面白そうだ」とFacebookに投稿しました。するとすぐさま「お題」が来てしまい、なし崩しで書き始めると、さらにどんどん「お題」が届き、次から次に書く羽目になってしまいました。
日本虚構エッセイストクラブ会長なんて偉そうに名乗っていますが、始まりはこの程度のもので、虚構エッセイとは何かなんて考えたこともなく、ただ単にへんてこな言葉を面白がっていただけだったのです。
ところが、そんな風にして書き始めてみると、書いている本人が毎回驚くほど面白いものがどんどん生まれてきました。
基本スタンスは「高階經啓とは別な人格になって書く」というものです。取り上げる内容は現実に即していても構いませんし、もちろん虚構になっていてもかまいません。別人格で書くことと、虚構の内容を書くことと、どちらが重要かというと、別人格になって書くことの方だと考えています。
別な人格になる、というのは、簡単に言えば年齢・性別・職業・趣味などなどについて、実際の自分ではない別な誰かを書き手に設定するということです。いわば「文学的演技」というか、もっと平たく言えば「書くコスプレ」とでもいうべき状態です。
別人格を演じることによって、オリジナルの人格(つまり高階經啓)なら言わないようなことを言ったりできるわけですが、その結果オリジナルの人格の時には思いつかないような発想に辿り着いたり、思いがけないような設定が見えてきたり、その結果書いた本人がびっくりするような感動が生まれたりするのです。
考えようによっては、小説家が創作する時にはいつも体験しているようなことなんですが、「虚構エッセイ」というスタイルで書くことでより自由にその面白さを楽しみ尽くせると実感しています。この楽しみをもっと広げよう、ということで「虚構エッセイの書き方入門」を始めることにしました。
本書を参照して、虚構エッセイストが次々に生まれてくることを期待します。本編では「虚構エッセイ第1集「大鉱脈」編」から、いくつかの作品を取り上げて解説するスタイルで、虚構エッセイの書き方について解説してまいります。読む楽しみ、書く楽しみの両方に触れるので、作品案内としてもご利用ください。
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