三周年特別編 -出逢いは運命のように
前編.見習い騎士の悩み【イメージ絵あり】
絵筆でひと撫でしたような薄雲と、きらめく真昼の
思えば出会ってから今まで、彼女が自作の詩を
「フォ、ファウ」
愛竜の
「ここに来るのも久しぶりだもんな。職員さんたち、ちょうど
「フォーン、ファッ」
「今年は色つきの卵はなかったらしいよ。やっぱり珍しいんだね」
「フォ……ファン」
「あはは、心配するなよ。俺にとっての相棒はトライドだけだって」
「ファッ!」
色つきと呼ばれる特殊な個体であっても、飛竜に人の言葉は話せない。セスも、上位竜族たちのように相手の心を読むことはできない。それでもトライドとはちゃんと意思疎通できているとわかるのだ。もちろん飛竜騎士は飛竜の意思を読み取る訓練を施されるのだが、それだけではないように思う。
出逢いの瞬間、かれのきらめく
⭐︎ ★ ⭐︎
実家を出てエルデ・ラオ国に移住し、ラファエル国王の元で竜騎士になると決意したものの、家族――特に長兄と父の反対は強かった。いま思えば、二人とも竜騎士を経験していたからこその心配だったのだろうけど。
確かに、騎馬戦もろくに経験しなかった見習い騎士が飛竜を乗りこなせるはずもなかったのだが、家族が夢を応援してくれないという事実は当時のセスにとって重すぎた。しかも、エルデ・ラオ国の
先輩竜騎士たちの輪に馴染めず、半ば心折れ、なけなしの自信もすっかり失い、
「セスに会わせたい子がいるんだよ。成竜になったばかりだからまだ乗れないけど、国王権限で特別に見せてあげる」
竜種は元より魔力の扱いに
一般の飛竜より魔法能力も身体能力も知能も高いと言われる色つき飛竜は、竜騎士たちにとって憧れの存在である。
しかし知能が高い希少種は誇り高い精神の持ち主でもあり、自分が認めた者以外に心を許すことはない。その孤高さゆえに、集団に馴染めないことも往々にしてあるのだという。
飛竜は卵から
無事に
牧場の職員たちには可愛がられていたが、多忙の彼らにとっては仔竜を手懐けようと入れ替わり立ち替わり訪ねてくる騎士たちも頭の痛い存在だったろう。そういう生まれ育ちを経て成長した黒飛竜は、一部の職員たち以外に心を開かぬ色つきとしてすっかり有名になってしまったのだった。
野生種の飛竜は山岳地域に群れを作って暮らすいきものであり、飼い慣らされた軍用飛竜であってもその習性は変わらない。だからこそ、開けた牧場施設でも多頭飼育が可能なのだが――逆をいえば単体で生きるに向いていない、ということでもある。
ラファエルは王子の頃からその黒い仔竜を気にかけ、騎士団長としてマリユスと一緒にその成長をサポートしてきたらしい。そして、何を思ったのかその黒飛竜をセスに会わせたいのだという。
多忙の国王を煩わせるわけにはいかない、と遠慮したものの、ラファエルがあまりに楽しそうに食い下がるので、最終的には押し切られた。王子時代とは違い日々政務に追われるようになった彼も、息抜きがしたいのかもしれない、とセスは思ったのだった。
いつかと同じように
上空から見る
鳥が飛ぶより高い空から眺める世界の美しさと快さに
(中編へ続く)
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※イメージイラストあります。
一枚絵:https://kakuyomu.jp/users/Hatori/news/16817330656562984581
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