第7話 図書館
お母さんが用意してくれたお昼ご飯を食べたあと、午後はお勉強と読書をかねて図書館にやってきた。
以前私が通ってた図書館よりも今の図書館のほうが広くて、綺麗で、この図書館はこの街に来てからのお気に入りだ。
(えっと、席の確保してから……)
空いてる座席の席札を取る。そして、席を確保すると、荷物をそこで広げた。
(今日は人が少ないから個人席が取れた。ラッキー)
些細なことだけど、ちょっとだけ嬉しくなる。少し気分が上がったところで、先程家でやったのとは違うドリルをやり始める。
(ここの主人公の心情は……)
私はお母さんの影響か、国語の文章を読むのが好きだ。国語ができればどの教科の問題文もきちんと読んで理解することができるから、まずは国語をしっかり学ぶこと、と言われた影響もあって、国語は一番得意な科目なのだ。
元々お母さんがよく寝る前に読み聞かせをしてくれるのがきっかけで、読書好きになったこともあって、物語を読んで、さらにそこからを思考するのが大好きだった。
勝手におしまいのその先をよく考えてしまい、自分なりにその後を想像し、よく授業中にノートの隅に箇条書きにして書き散らしていたものだ。
お母さんにはよく、「麻衣は作家に向いているかもね」と言われたが、読むのは好きでも文章を書くのは難しくて、イマイチ自分が考える物語を作ることはできなかった。
(私が考えたことが勝手に文章になって物語になってくれればいいのに)
いくら寝ている間に時代は進歩したとはいえ、そんな画期的なものは作られておらず、私はただひたすら新しく始めたドリルを進めていった。
「ふぁぁぁ、っと、って声出ちゃった」
慌てて口を押さえる。キョロキョロと周りを見渡すと、ほとんどの人が離席していたようで、私の欠伸は気づかれていなかったらしくホッと胸を撫で下ろす。
集中していて気づかなかったが、既に時間は15時を過ぎたところだった。集中するととことん没頭してしまう性格なので、時間を忘れて何かに取り組めるっていうのはそれはそれで良かった。
今日の成果は国語と算数と理科のドリルの3つである。事故前には塾で受験勉強をしていたこともあって、小学生で学ぶ部分は粗方修学済みだった。
10年という長い間に記憶は薄れてしまっているかも、と危惧していたが、やってみると案外覚えていたことが多く、我ながら偉いと自画自賛する。
せっかくだし、次はもうちょっとレベルの高い中学生用の参考書と過去門でもしてみようかな、と席を立つ。
貴重品を身につけて参考書のコーナーに行き、パラパラとめくる。とりあえずそこまで難しくはなさそうかな、といくつか参考書を手に取ると、再び席に戻った。
(閉館まであと2時間弱だからやれるとこまでやろう)
今度は持参したノートを開く。さすがに中学校の勉強は初めてなので参考書を読みながら数学なら公式を覚え、古文であれば各行の変換活用などを覚えていく。
コツさえ掴めば案外どうにかなりそうだと気付いて、再びカリカリと筆を走らせる。
(楽しい)
そういえば私は勉強が好きだった、と思い出す。こうやって知らない知識が自分にどんどん吸収されることが面白い。
これを覚えたことで何か劇的に変わることは何もないけれど、ただ吸収された知識が自分の糧になる気がして、ちょっとした万能感に浸る。
(みんなが既にやっていることに追いつこうとしているだけだけど)
それでも、なかった知識が増えていくのは楽しかった。
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