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宗像さんは白良さんと共に警察の公用車に、わたしは常陸さんのセダン車に乗り、四十分後、斯波家(家、と言っても一軒家ではなく、四階建てのマンションの一室である)付近に到着した。
宗像さんたちはそのままマンション近くの路上に車を止め、わたしたちは近所のスーパーの駐車場に陣取って待機。じっと採点の結果を待つ。
この待つ時間はやはり、嫌いだった。
わたしがぼんやりと買い物客の様子を眺めていると、密閉空間での無言に耐えかねたように、運転席に座った常陸さんが、後部座席に顔を向けた。
「あー、真名ちゃん、さ。改めて言うのも何だが、悪かったな、白良さんの、あれ」
常陸さんが悪いわけではない。多分、白良さんが悪いわけでもない。あの雑談は確かに今後の仕事のために必要なもので、あの人が悪者を買って出ただけだ。そう納得しようとしています、と素直に伝えた。
常陸さんは、「あたしよりよっぽど大人だな」と頭を掻いた。
「あたしから話すわけにはいかねえんだが、宗像とあいつの元相棒の間には色々あってな。……正直あたしもまだ、割り切れてない部分がある。多分、白良さんは上に立ってる分、余計に過敏になってんだ。真名ちゃんが本当に、こっち側にいることに後悔はしないか、確認したかったんだと思う」
後悔。
後に、悔いる。それをするかどうかは、神様にしかわからない。そしてわたしは、神様ではなかった。だからいつも、後悔がついてくる。
「その『色々』は、誰なら話してくれますか?」
「あー、事情を知ってる人間は複数いるが……宗像しか話せない。話しちゃいけないとあたしは思う。真名ちゃんには、いずれあいつの方から話すとは思うぜ……ったく、あたしにこんなフォローさせるなっての。宗像の野郎も白良さんも。……っと、噂をすれば、だな」
常陸さんの携帯が光を放ちながら鳴っている。
さあ、採点の結果を聞く時だ。たとえそれがどんな意味を持つにしても。
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