幕間


 わたしがある人を殺したのは、今から二年と四カ月前のことです。

 誰にも見つからず。誰にも気取られず。誰にも裁かれず。

 そのためのトリックを考えました。

 結局は誰かに暴かれることになるだろうという、歪んだ欲望を抱えながら。

 殺して、解かれて。わたしは、それでようやく、認識される。

 そう、思っていました。

 でも、わたしの事件は、わたしの思惑とは異なる結末が与えられました。

 解決の場に立ち会っていたわたしは、呆然と、自称名探偵の推理を聞いていました。

 得意げに語るその顔を、今でもはっきりと覚えています。いえ、脳に刻み込んだんです。次に会ったら、殺してやろうと。


 完全犯罪が成功してしまったらどうなるか、ご存知ですか?

 どうにもなりません。

 無実で生きるなどというのは、社会では当たり前のことだからです。

 墓標には別人の名前が刻まれたまま、わたしの犯罪は死にました。


 誰かに見つけてほしい。

 誰かに気づいてほしい。

 誰かに裁いてほしい。

 自分の行為を、現実にあったものだと承認してほしい。


 それが、わたしの、たった一つの願いです。

 ありがとうございます、宗像さん。

 わたしの『お終い』への物語は、ようやく始まりそうです。

 ただ、教えてください。

 宗像さん、なぜ貴方はこんな人殺しを、側に置いているんですか?

 貴方の目的は、何ですか?

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