ミリオン級潜航艦二番艦「ノイマン」の暗闘の記録

第三部プロローグ

宇宙における見えない戦争

     ◆


 管理艦隊という特殊な軍団は、常に地球連邦軍、それも統合本部からの管理とせめぎ合っていたことは自明だ。管理艦隊は独立派勢力を撃滅することが目的であり、それと同時に独立派勢力の発生を抑制する(連邦議会の小会議では「絶滅」させることは、やや地球連邦憲章に反するため不可能と解釈された)のが目的であるはずが、連邦軍からすれば、ほとんど独立しているこの軍団が、連邦に反旗を翻すことは、例え遠方を受け持つとはいえ恐怖以外の何物でもなかっただろう。反対に管理艦隊からすれば、それは不当な評価であり、痛くもない腹を探られている、と言ったところだっただろうが。

 しかし実際的には、統合本部は抜かりなく管理艦隊にも、他の地球連邦軍への内偵と同様の手足を忍び込ませていた。これが思わぬ事態の出来に際して、管理艦隊、その中でも特にデリケートかつ決定的な秘密任務に従事することになるミリオン級潜航艦二番艦「ノイマン」に影響を与えることになる。

 統合本部の長い手と、管理艦隊の秘密兵器が組み合わさったことが、ある種の局面を出現させたのが、一方の側には奇跡的な幸運であり、もう一方の側には極端に不運で、後戻りすることができない決断を迫るのだから、世界とはよくできているものだ。

 全てをコントロールすることができる存在はおらず、神もまた天地創造以来、この世界に再び現れたことはない。人間には支配できない何かが、からまり合い、もつれ合い、幸運と不運の織物が出来上がった時、宇宙は激動を始めたことになる。



ミカエル・ウェーバー・著「宇宙戦争の舞台裏」より抜粋

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