ミリオン級潜航艦一番艦「チューリング」の飛躍の記録
第2部プロローグ
ミリオン級潜航艦の復活
◆
ミリオン級潜航艦一番艦「チューリング」の初めての任務での失敗は、疑いようのないものである。この艦の処女航海は、無為無策の体現であり、これが管理艦隊における諸問題の一因にもなった。つまりある種の情報漏洩であり、艦それ自体の存在や戦力、科学技術を敵側に意味もなく示してしまったことが、管理艦隊が直面する難題を呼び寄せたのだ。
当然のようにチューリングの艦長を始め、下士官までが艦を下されたが、その次に管理艦隊が艦長に指名した老士官は、管理艦隊では噂になりこそすれ、鳴り物入りで、などという言葉は間違っても使えない、平凡な士官だった。もしミリオン級がなければ、この士官が艦長職などというものにありつくことはなく、彼はそのまま年を重ね、やがては平凡に退官したのではないか。
何はともあれ、この士官は管理艦隊司令部の期待に応えようとしたようだが、人材登用の点で、早速、異色の采配を振るうことになる。これを管理艦隊司令部が許したのは紛れもなく、ミリオン級潜航艦三番艦「チャンドラセカル」の艦長という先例があり、そのチャンドラセカルの功績を評価したからだろう。チャンドラセカルはその中枢である管理官を、方々からかき集めたようなものだったが、その采配を振るった青年艦長の慧眼は、最適な人材を集めるのに成功していたから、チューリングの老士官に文句を言えない面が、管理艦隊司令部にはあったと思われる。
何はともあれ、チューリングは艦として生まれ変わるというより、その内部をそっくり入れ替えることで、再び宇宙へ漕ぎ出すことになる。
エルデン・ジャクスン・著「ミリオン級回顧録」より抜粋。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます