ミリオン級潜航艦三番艦「チャンドラセカル」の秘密航海記録

第1部 プロローグ

宇宙時代における地球連邦と独立派勢力に関して

 アース・ジャーナル誌

 第四十五号に掲載

 マスハ・ワーグナー著

「地球連邦の成立と、連邦が直面した土星問題について」より抜粋


(前略)

 地球連邦が成立した背景として宇宙開拓は外せない要素だ。宇宙が新しい「土地」であり「資源」となった時、地球は一つに統一される道に、第一歩を、極めて大きな一歩を踏み出すことができた。

(中略)

 月面開発の成立をもって暦が改められ、人類は宇宙へと本格的に踏み出した。

 宇宙移民の生活の場として初期は宇宙コロニーから始まり、火星の地表の部分的な地球化があり、さらに、衛星軌道上に人造衛星が建設された。

 度重なる事故と犠牲を教訓にして準光速航行が現実のものとなり、人類はさらに遠い場所へと新天地を求めていった。

(中略)

 木星、そして土星と進出していった人類だが、ここに至って地球連邦からの独立の気運が、土星を中心に高まり始めた。

 地球連邦は支配域の引き締めを図りつつ、遠方であるが故に支配権が曖昧な土星周辺を「非支配宙域」と再定義して、そこを管理する新設の艦隊を編成した。

 その艦隊の一部に、宇宙を秘密裏に航行する新造の潜航艦三隻があった。

 ミリオン級潜航艦と呼ばれるその三隻のうちの三番艦が、ある種の伝説として語られる「チャンドラセカル」である。

 ただしチャンドラセカルの冒険の最初にあたる部分は秘密任務であるため、長らく秘密のベールの向こうにあった。



(続く)

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