呼ばれた子

ちゅん汰ぁ

呼ばれた子


この台本を選んで頂きありがとうございます

こちらは、朗読台本となっております


この作品を読んで頂くにあたって、いくつか注意点がございます


・この作品の内容を大きく変えないこと

・多少の改変はして頂いてもかまいません

・この作品に対して、主に対しての誹謗中傷はご遠慮ください

・男女不問です


以上の事柄を守って頂き、楽しんでもらえたら

主として凄く嬉しいです


゚+o。◈。o+゚+o。◈。o+゚+o。◈。o+゚+o。◈。o+


「台本」




ある夏の夜


盆踊りに向かう浴衣姿の女の子が

下駄を履き、舗装された道を楽しそうに

鳴らしていた

その姿を目で追いかけながら

父と母、親指を口に咥えた弟が

父親に抱っこされ

会場に行く途中だった



その日は朝から蒸し暑く

じっとしてても汗をかくくらい酷かった

扇風機も何の役にも立たず

兄弟2人が陣取っていた


そんななか、女の子は弟と

両親とお墓参りに行くことになった

御先祖様に手を合わせた後

近くの神社に寄ってお参りをして

夕方の盆踊りに備えて一度、家に帰った


母が作ってくれた浴衣を着て

髪を結ってもらい、髪飾りも付けてもらうと

どこぞの花街に住んでいるかのような

別人の自分にうっとりしていると

襖の隅から


「これは、何処の可愛らしいお嬢さんかな?」


と、優しい声で父が微笑み語りかけてきた

女の子は、うふふと笑って

鏡に向かってニッコリと微笑んだ

そうして今、家族みんなで夜風に辺りながら

向かっている



会場に着くと

周囲を囲むように

いくつもの提灯がぶら下がっていて

異世界に来たかのようだった

数少ない出店(でみせ)ではあるものの

高櫓からの太鼓が鳴り響くと

その音に合わせて

たくさんの人が笑みを零し、華やぎ舞った

女の子もそこに混ざり楽しく踊ってみせた


一通り踊り終わると女の子は

昼間に行った神社のことを思い出した


昼間の神社は少し湿っていて

その湿った感じがこの日に限っては

心地良かった

蝉がうるさく鳴く中、

父親と弟と日陰で散歩をして

日陰にいる虫を見つけると観察したり

ドングリ拾ったり、草笛吹いたり

葉の形まではっきり見えた

そのくらい明るかったし

きっと、提灯もぶら下がってて

昼間のように明るいだろう

と幼心にそう思った

そう思い込んでいた


だから

「行きたい!」と、思った


そう思いこみ始めたら

次第に気になり

行かなきゃいけないんだ

行かなければならないんだ


行かなきゃ……!


行かなきゃ………!!


行かなきゃ…………!!!


とそんな気持ちに急かされた


女の子は母親の服を引っ張り、星空を眺めるかのように顔を上げ、両親にお願いした

最初は反対されたのだが、父親が折れ

家族みんなで行くことになった



女の子は嬉しくて、嬉しくてゴロゴロ転がる岩の上を伝いながら

山の上にある神社へ向かった


神社へ向かう道中も提灯がぶら下げており

歩くには不自由しなかった

しかし、小さな体には大きな岩はとても高く

一つ一つ登るのに苦労した

時折、母や父が手を引いてくれた



息を切らし、なんとか神社へ辿り着くと

明かりは一つもなく、辺りは真っ暗で

昼間とは違った異様な光景だった


鬱蒼(うっそう)と生い茂る木々は夜風になびき、ミキミキ、ミシミシと鳴り響く

社の建つ周辺の小さな祠が瘴気を放っているかのような禍々しいものに見えた

そこから、恐る恐る今いる入口に目を戻すと

闇夜に潜む狛犬の姿が何かに取り憑かれた

妖怪のようで更に恐怖を与えた


特に口を開けた狛犬は

今にも飛びかかって噛み付いてきそうで

口を閉ざした狛犬は

鋭い眼差しでこちらを睨みつけている



「帰ろう!!」

「帰ろう!帰ろう!!」


女の子は、母親の服を力任せに引っ張った


着いて、ものの何分も経ってもいないが

その異様な雰囲気に

立ち去りたいと思った


怖くて怖くて居たくない

いちゃいけないと

そう思った


足はガクガク震えるし

涙がポロポロと零れ落ちる


その姿を見た両親は元きた道を女の子と一緒に降りた





その晩、女の子は母親と弟と

同じ布団で眠ることにした

あの怖さからか女の子は母のすぐ隣に入り

心音を聞くと安心したのか寝息をたてた


はしゃぎ疲れたのと先程の恐怖からか

ドっと疲れたのだろう

寝息が聞こえてくるまでに

さほど時間はかからなかった


意識が遠のいて行く中で女の子は

自分の周りがポーっと明るくなっていくことに

気がついた

辺りをキョロキョロ見渡してみると


そこに、先程行った神社が

穏やかな表情で佇み、

女の子と向かい合って建っていた

先程、夜見た神社とは違い、暖かく

安心するような包み込むような

そんな優しい雰囲気が感じられた


すると向こう側から


「会いたかったぞ、神の子よ

生まれる前から、お主のことを待っておったぞ」


そう言い終えると視界からぼやけて消え

朝になると女の子の姿はなく

庭には植えた覚えのない

ヒナゲシの花が咲き乱れていた




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呼ばれた子 ちゅん汰ぁ @cozu-ktcya

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