終わった世界で終わらない夜を進む主人公のナオヤ。彼が街灯の下で出会ったのはとある女性。しかし、彼女はただのヒトではなく……
永遠の夜に包まれた世界を旅するナオヤとサヨの物語は遠い遠い世界終末後の出来事ですが、どこか懐かしさを抱きそのノスタルジックな雰囲気に引き込まれます。
触れ合う温もりは明けない夜の寂しさを埋めてくれます。時々ハラハラする展開や切なくなるお話があるのもストーリーの強弱になっていて、とても流れの作り方がお上手です。
あまり深くは言えませんが、キャラの諸々の書き方も巧みで読み進めるためにドキドキします。読み返した時に改めて各キャラの台詞のあれそれに気が付けて、もしかして……とゾクゾクしました。
一話一話が短めで読みやすいのでちょっとした時に読めるのと、なによりじっくりゆっくりと夜の闇に浸るように世界観に触れていけるのが本当に読んでいて心地良いです。読み終えた後はどのお話も思い出のようにじんと心の残ります。一話一話、宝物に触れるように大切に読みたくなる素敵な物語です。
最初は連作短編のようですが、後半になると前半の諸々が重なり合ってきて読みながらすごく興奮しました。先程も言った通り一話一話が短いので話数が多くても苦にならず、読み切れてしまいます。むしろじっくりと読ませて頂くには丁度良いと私的には思います。
旅のお話ですが、なんというか夜の散歩に付き合うような感覚にもなれます。個人的には少し不思議という雰囲気が好きな方も好まれる作品ではないかと思いました。
終末世界の夜の旅。是非二人とともに歩んでみませんか?
そこには夜を照らすあたたかな光があります。