第91話 帝都
それからしばらく歩くと……前方に光が見えた。その光はいくつも灯っており、一つの塊のように見える。
「あれが、ウチの住んでいる街……帝都ってやつね」
「帝都……つまり、あそこが帝国の中心ってことですか?」
「そうね。っていうか、帝国には街って、あの帝都しかないらしいけどね」
ムツミは本当に興味なさげにそう言う。おそらく本当にどうでもいいという感じなのだろう。
「ま、近くに行ってみないとわからないでしょ。ほら、行こう」
言われるままに俺は光の集まりの方に向かっていく。段々とそれが近づいていくにつれて、それが光の集まりではなく、多くの建物の集まりであるということを理解した。
「これが……帝都……」
帝都はまさに、大きな機械の集合体のようであった。そして、入り口らしき場所から見える街の中には無数の人造人間が蠢いているのが伺える。
「ほら、こっち」
ムツミに言われるままに俺は帝都の中に入っていってしまう。
行き交う人造人間の数はまさに無数であった。それこそ、既に世界が終わってしまっているのだということを忘れてしまうくらいに活気がある。
今俺とムツミが歩いているのは街の大通りに当たる場所のようである。両側には商店らしき場所があり、店の中にも多くの人造人間がいるのがわかる。
「……信じられない。こんなに人造人間がいるとは……」
「ホントにアンタ、初めてなのね……ほら、ウチからはぐれないようにしてよ」
ムツミにそう言われたので、俺は注意深くムツミのことを見ながら後をついていった。ムツミはそのまま大通りを進んでいったかと思うと、急に狭い路地の中にはいる。
そして、その路地を進んでいく、薄暗い通りに出た。その通りにもいくつかの店があるように見える。
「ここね。ウチの店」
ムツミがそう言って建物を指差す。確かに建物ではあったが、店というか……
「……ガラクタ置き場?」
思わず俺がそう言うとムツミはバシンと俺の背中を叩く。
「違う! ウチの店なの!」
ビリビリとした感覚を覚えながらも、今一度ガラクタ置き場を観察する。確かによく見ると、ガラクタにも並び方があるようである。
「これとか、人間がいた時代に使われてた機械の部品なのよ? すごくない?」
嬉しそうにガラクタを見せてくるムツミ。どう見てもガラクタだが……ムツミにとっては価値のあるものなのだろう。
それにしても……ここは大通りとはまるで違う。なんというか……こちらのほうが俺にとっては落ち着くようだった。
「ほら。アンタも迷子で疲れたでしょ。店の奥に休める場所があるから、来なさいよ」
そう言ってムツミは店の奥に入っていく。疲れる……ということは基本的には人造人間には存在しない感覚のはずだが……俺はそのままムツミに案内されるままに店の奥に入っていったのだった。
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