第60話 扉
豪邸の中は……見たままに豪邸であった。
大きなシャンデリアに、綺麗な装飾の部屋……絨毯も綺麗に整備されている。
どういうわけか、電気もついているので、外とは比べ物にならないくらいに明るい。
そして、床には一つもゴミが落ちていない……完全に手入れが行き届いた空間だった。
「……すごいな」
思わず俺は言葉を漏らしてしまう。すると、ミレイが小さくお辞儀をする。
「この屋敷を管理する責任者として当然でございます。さぁ、どうぞこちらへ」
そう言ってミレイが案内をする。案内されるままに付いていった先は、これまた広大な部屋だった。
「ここは客間です。どうぞ、ゆっくりとなさって下さい」
「あ……ど、どうも……」
「何かありましたら、ワタクシを呼んで下さい。では」
ミレイはそう言ってそのまま部屋を出ていってしまった。残された俺たちは思わず部屋を見回してしまう。
ミレイの言う通り部屋の中は客用の部屋のようであった。大きな壺や、価値がありがそうな絵画が飾られている。
「それにしても……屋敷の主人とやらはどうしたんだろうな?」
と、不意にサヨがそう言った。言われてみれば確かに屋敷の中に入ってミレイとしか会っていない。
そもそも、こんな大きな屋敷だというのに、ミレイにしか会っていないのもおかしな話だ。こんな大きな屋敷、ミレイ一人で管理できるものだろうか? 他のメイドはどうしたのだろう?
「……探してみる?」
「フッ……言うと思ったよ。しかし、私も少し気になっていたんだ。おい、人形モドキ」
と、サヨがクロミナに話しかける。クロミナは先程から、小さな机の上に置かれた写真を見つめていた。
「はい。なんでしょうか」
「お前はどうする? ここにいるか?」
サヨにそう言われた直後、なぜかクロミナは俺のことを見ている。そして、立ち上がると俺の方に近づいてくる。
「私は、ナオヤと一緒に行きます」
「……そうか。まぁ、その方が私も安心だな」
サヨはなぜか少し不満そうにそう言った。
「え……サヨは一人で大丈夫?」
「心配してくれるのか? これでも戦闘用人造人間だぞ? お前たちこそ、十分気をつけろよ」
そう言って俺たちは扉を出ると、別れて豪邸の中を探索した。俺とクロミナは広大な屋敷中をとりあえず適当に探索することにした。
よく考えればミレイに主人に合わせてほしいと言えば良かったと思うのだが……なぜか、それを聞いてはいけない気がした。
「ナオヤ」
と長い廊下を歩いている時に、急にクロミナが俺に話しかけてきた。
「……どうしたの?」
「先程見ていた写真ですが、ミレイと小さな女の子が写っていました」
「え……それって……ミレイが言っていたお嬢様……この屋敷の主人?」
「おそらく。ですが、あの写真。状態や劣化具合から、おそらく撮影されたのは少なくとも50年前です」
「……え? 50年?」
思わず俺は足を止めてしまった。クロミナはそのまま小さく頷く。
「……そのお嬢様は……人造人間だったとか?」
「いえ。写真からの判断ですが、おそらく、人間です」
……ということは、お嬢様、というよりも、既に老人といった方が正しいだろう。
しかし、もし、そのお嬢様が存命ならば……なぜ、俺達の前に姿を現さない?
と、そんな会話をしていると、廊下の先に一際大きく、豪華な作りの扉が見えてきた。
「え……あれは……」
俺はなんとなく、その扉がおそらく俺たちが探しているものがその先にある部屋の扉だと理解していた。
しかし、それと同時に、その扉は開けてはいけない……なんとなくそう感じてしまった。
「では、入りましょうか」
「え? ちょ、ちょっと! クロミナ!」
俺が止める間もなく、クロミナは扉の取っ手に手をかける。
そして、おそらく、開けてはいけないであろう扉が開いたのだった。
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