第46話 複製品
「……フッ。何かと思えば……これが創造だって? 笑わせるな」
サヨが馬鹿にした調子でそう云う。しかし、クロトは微動だにしなかった。
「それじゃあ何か? このシェルターの中にいる住民は全員お前が記憶を創造したやつだっていうのか?」
「えぇ。そうです」
サヨもさすがにそう思っていなかったのか、クロトのあっさりとした肯定に少し驚いたようだった。
「何人かは、私が実際に余った部品から作った人造人間もいます。最近は部品が減ってしまったので記憶チップしか作成できませんが……住民を増やすことは困難になってしまいましたが……ですが、問題はありません。住民をこれ以上増やす必要はないのですから」
言われてみればニナがいた工場では、クロトが作ったと思われるA型人造人間が何体か置いてあった。おそらく、クロトはパーツさえあれば、一から人造人間を作ることができるのだろう。
「それは……維持するだけでいいってこと?」
今度は俺が質問した。クロトは俺の方にその黒いヘルメットのような頭部を向ける。
「その通りです。夜明けの時代を迎えるまでにはこれ以上の数は必要ありません。その時を迎えてから増やせばいいのです」
と、そんな話をしていると、また扉が開いた。
「管理者。先程の人造人間ですが、問題なく街に戻ったようです」
這入ってきたのはクロミナだった。無表情でクロトにそう報告する。
「そうですか。それはよかった……あぁ。そういえば、私が作った人造人間の中では、クロミナは特別ですよ」
「特別……それって、どういう意味で?」
俺がそう聞いてもクロトは答えなかった。
「……さぁ。クロミナ、お二人もお疲れでしょうから。お部屋にご案内してください」
そう言うとクロミナが俺たちの方にやってくる。
「どうぞ。こちらです」
俺はサヨの方を見る。サヨも怪訝そうな顔だったが、ここは大人しく従っておいたほうがいいだろう。
俺とサヨはクロミナに言われる通りに部屋を出ることにした。部屋を出る時、振り返ると、黒いヘルメットに浮かんだ青い光が不気味に俺の方を見ている気がした。
部屋を出て、少し歩いた場所にまた扉があった。扉の中は物置小屋のような……小さな部屋だった。
「人造人間が疲れるなどと、管理者は面白い表現をしますね」
部屋に入った後でクロミナは淡々とした調子でそう言った。
「……お前はその管理者のお気に入りなのだろう?」
サヨがに皮肉っぽく言うが、クロミナには通じていないようである。
「お気に入りかどうかはわかりませんが、私は確かに他の住民とは異なる点があります」
「異なる点って?」
俺が尋ねるとクロミナはなぜか自身の頭部を指差す。
「私の記憶チップは、管理者のものと完全に同一です」
「……え? それって……」
「はい。簡単に言えば、私は管理者の複製品なのです」
クロミナは淡々とした調子で、さも、大したことのないことであるかのようにそう言ったのであった。
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