第47話 保証

「複製品って……じゃあ、君は……クロトなの?」


「いえ。そうではありません。記憶チップが同じ……つまり、管理者の記憶が私の記憶なのです。私と管理者は記憶を共有していることになります」


 クロミナは平然とそう言う。しかし……ちょっと想像できなかった。自分の記憶が他人と同じだなんて考えただけでちょっと嫌な気分だ。


「思考パターンは管理者とは異なります。ですが、記憶が同じなので、管理者が何を考えているかはわかります。なので、アナタ達は、あと1時間後には此の街から出ていかなければなりません」


「え……どうして?」


「管理者はああ言っていましたが、彼は常に住民を増やすことに余念がありません。訪問者は総て住民にするのが彼の考えです。実際、そうしてきた記憶があります」


「じゃあ……クロトは俺たちも住民にしようとしているってこと?」


 クロミナは小さく頷いた。思わずあの黒い巨体を思い出して俺は少し恐怖してしまう。


「ですが、彼はあと一時間で休息に入ります。記憶チップの製造は彼にとっても大変な作業ですから。なので、その頃を見計らってアナタ達を迎えにきます。安全にこの街から脱出させてあげましょう」


「……保証はあるのか?」


 と、サヨが鋭い言葉をクロミナに投げかける。


「保証、とは?」


「お前を信じて、確実に脱出することができる保証は?」


 クロミナは黙ってしまった。確かにサヨの言う通りクロミナの言うことを信じて、確実に脱出できる保証はないわけである。


「保証はできませんが、何度か脱出を手伝った記憶があります。これは管理者の記憶にはない私だけの記憶です」


 クロミナは無表情でそう言った。サヨはその顔を睨みつけている。


「……わかった。お前を信じよう」


 サヨがそう言うとクロミナは俺のことを見てから、扉の方に向かう。


「では、1時間後に迎えに来ますので」


 そういってクロミナは部屋を出ていった。


「……随分あっさり信用するんだね」


 意外だったために思わず俺はサヨにそう言ってしまった。しかし、サヨは首を横にふる。


「信用するわけ無いだろ。あんな人形モドキ」


「人形モドキって……でも、あんなこと言ってくれるんだし、ホントに俺たちを助けてくれるんじゃないの?」


「……なぁ、どうしてあの黒いデカブツ……私達の名前を知ってたんだ?」


「……あ。そういえば……」


 言われてみれば、クロミナがクロトに俺たちの名前を教えている場面はなかった。では、どうしてクロトは俺達の名前を知っていたんだ?


「共有しているのは……記憶だけじゃないかもな」


 サヨの言葉に俺は、先程のクロミナの無表情を今一度思い出すのであった。

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