第45話 創造
クロトは、人造人間達の居住地へと向かっていった。俺たちはその後をついていく。
と、暫く歩くと、前から女性がやってくる。見ると……クロミナだった。
「管理者。対象は女性型、機能停止状態です」
「わかりました。ありがとう、クロミナ」
クロトはそう言って前へ進んでいく。俺たちとクロミナはその後を付いていった。
そして、程なくすると、人造人間達の人だかりができていた。そこへクロトが向かっていく。
「すいません。どいてください」
と、集まっていた人造人間達は、クロトを見ると同時に散っていく。その中心には、たしかに女性が倒れていた。
クロトはまるで医者のように倒れている女性の体を触ったり、目を開いたりしている。
「……残念ですが、彼女の役割はここまでのようですね」
そう言うと、クロトはその巨体で彼女を抱え、元来た道を歩いていく。
「……ねぇ、クロミナ」
俺は思わず隣りにいたクロミナに訊ねてしまった。
「はい。なんでしょうか」
「その……クロトは本当に人造人間を作れるの? あの部屋にはそんなに部品も設備もなかった気がするけど……」
俺がそう言うと、クロミナは目を丸くして俺を見ている。
「作る、ということが何を指しているのかわかりませんが、管理者は人造人間を作っています」
いまいち容量を得ない回答だったので俺はそれ以上尋ねるのはやめてしまった。
クロトは部屋に入っていった。俺たちも同様に部屋に入る。
と、クロトは作業台の上に女性を置いていた。それと同時にクロトの背中からアームのようなものが何個か飛び出してくる。
「……手術でもするつもりか?」
サヨがそう言うとクロトは振り向かずに答える。
「いえ。私は医者ではないので、手術はできません。私にできることは、この身体を新たな存在として創り出すだけです」
「どういう意味だ? ソイツは……機能停止しているんだろ?」
「えぇ。既に彼女は人間で言えば、死亡している状態ですね」
「じゃあ……どうするつもりだ? お前は、死者を蘇らせることができるっていうのか?」
「いえいえ。それはできません。ただ……新しい存在として創造することはできるんですよ」
そう言ってクロトが俺たちに見せてきたのは……小さなチップのようなものであった。
「これは記憶チップです。私はこれを余った人造人間のパーツから作ることができるのですよ」
そう言いながらクロトは作業を続けているようで、作業台の方からはバチバチとした火花が見えている。
「これを彼女に埋め込めば……彼女は新しい存在として生まれることができるんです」
と、クロトの動きが止まった。クロトが巨体をどかすと、いつのまにか女性が作業台の上に起き上がっていた。
「あれ……私は……」
「目覚めましたか。ようこそ、私達の街へ」
「え……私は……なんでここに?」
「落ち着いてください。ほら。アナタの知り合いが迎えに来ていますよ」
と、扉の方に先程駆け込んできた男性が立っていた。女性は何がなんだかわからないようであったが、立ち上がるとそのまま男性の方に向かっていく。
男性は嬉しそうだったが、女性は……イマイチ状況が飲み込めていないようだった。
「これが、私の創造です」
いつのまにかクロトが俺達の前に立っており、強い口調でそう言ったのであった。
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