第19話 宿泊
「……なんだここは?」
俺とサヨはいつのまにかそれなりに大きな建物の前に立っていた。かなり寂れているが珍しく電気が通っているようである。
闇の中に浮かぶ、薄汚れた電光看板には「宿泊」と「休憩」と書いてある。宿泊……ホテルか何かだろうか?
「……ホテルじゃない?」
俺が思ったことをそのままそう言うと、サヨは怪訝そうな顔をする。
「……そうだな。問題なのはこんなに寂れているのに電気が通っているってことだ。つまり……何者かが管理をしているってことだろう」
確かにサヨのいうことには一理ある。今までそれなりに通ってきた道ではどこもまるで電気が通っていない建物が多かった。
しかし、一応目の前の建物……ホテルらしき建造物は電気は通っている。
ということは、誰かが管理をしているってことだ。
「入ってみればわかるんじゃない?」
俺がそう言うと明らかに嫌そうな顔をするサヨ。そんな顔をされても、俺としてはここにいる何者かが一体どういう存在であるのかはちょっと気になる。
「……わかった。とりあえず、入るぞ。ただし、危険を感じたらすぐに脱出するからな」
サヨは態度はかなりキツイが意外に慎重派のようである。俺とサヨはとりあえず玄関らしき場所の中に入っていった。
「イラッシャイマセ」
扉を開けて中に入った瞬間、声が聞こえてきた。俺とサヨは思わずそちらに顔を向けてしまう。
見ると、ロビーに人影があった。それは人造人間どころか……かなり古いタイプのロボットのようだった。
「おいおい……こんな旧式、まだ動いてたのか……」
信じられないものを見る目つきでサヨはそう言う。
「ワタクシハ当ホテルノ支配人デス。オ客様、休憩デスカ? オ泊リデスカ?」
会話機能もかなり片言のようである。俺とサヨは思わず顔を見合わせてしまう。
「……なぁ、私はさっさとここから出ていったほうが良いと思うんだが」
「え? せっかくだし、泊っていかないの?」
「宿泊、デスネ。承知シマシタ」
と、勝手に俺達は宿泊することになってしまった。
「お、おい! 私達は泊まらないぞ!」
「オ部屋ハ、245号室ニナリマス。以降ノキャンセルハ不可能デス。鍵、ドウゾ」
そう言ってロボットはサヨに鍵を半ば強引に押し付けてきた。
「泊まらないと駄目、みたいだね」
俺が笑顔でそう言ったのに、サヨはとても不満そうな表情なのであった。
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