第14話 事情
「……ふ~む……そうねぇ」
サヨの手のひらを見ながら、女性は唸っている。確かにサヨの言う通りでもある。これはいわゆる手相を見るというヤツなのだろうが、手相っていうのは人間特有のものだろう。
機械である彼女の手を見ても手相っていうものがわかるのだろうか。
「……大体わかったわ」
「は! 大体わかった? 何が分かったんだ!? 私は人造人間だぞ? 手相など見てもわかるまい!」
なぜかサヨは自信満々でそう言った。しかし、占い師はキョトンとした顔で彼女を見ている。
「ええ。分かっているわよ。私、人造人間専門の占い師だし」
「はぁ? 人造人間専門の占い師? なんだそれは……」
「そりゃあ、人造人間が増えた頃から、人造人間から占ってほしい、っていう話もあったもの。普通のことでしょう?」
占い師は当たり前だという顔でサヨを見る。サヨは何も言い返せないようだった。
「……まぁ、そうかもな。だ、だが……占いの結果は……信じられないな。そもそも、機械である人造人間に、未来や運命など……」
「あるわよ。人造人間にも。運命や未来が」
占い師にきっぱりとそう言われてしまい、サヨは何も言えなくなってしまった。
「そうね……アナタ、随分と辛い経験をしてきたようね。自分が生きていることが不思議でしょうがないと思っている……でも、それは運命なのよ」
「……何を言っている。私はそんなこと、思っていない」
「でも、アナタは生き残るべくして生き残った……他の人がいなくなって自分が存在しているのは、アナタにするべきことがあるから。そして……あのお兄さんと行動しているのも、すべて運命なの」
占い師はそう言うと、俺の方を見て小さくウィンクする。俺はただその様子を見ていることしかできなかった。
「……ありえない。私が今ここにいるのも、生き残ったのもすべて……偶然だ」
サヨは立ち上がった。そして、そのまま歩いていってしまう。
「え……ちょ、ちょっとサヨ……ごめんなさい。なんか……」
「お兄さんの占い結果も、言っても良い?」
いきなりそう言われて、俺は驚いてしまった。てっきり、サヨのことしか占っていないと思っていたからだ。
「え……いいですけど……」
「……アナタは、アナタ自身の存在を認識できていないわ。面白い人ね。でも、それでいいと思うわ。そして、さっきも言ったけど、アナタとあのお姉さんが出会ったのは必然であって運命……分かる?」
占い師は真剣な顔でそう言う。そう言われて俺は返答に困ったが、とりあえず、小さく頷いておいた。
「俺も運命とかわからないけど……旅は続けようと思っていますよ」
俺の返答に占い師は満足そうに頷いた。いつのまにかフラフラとサヨが歩いていってしまう。
「引き止めてごめんなさい。あの子にはアナタが必要だわ。行ってあげて」
占い師は最後に笑顔でそう言った。俺は彼女に小さく会釈すると、慌ててサヨを追いかけていったのだった。
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