第6話 萎縮

 それから俺達は街を出てしばらく歩いていた。と、少し先の街灯の下に人影が見えた。


「誰かいるね。サヨみたいに街頭の下に蹲っている……知り合い?」


「……そんなわけないだろう。私はあまり関わらない方がいいと思うがな」


 サヨは相変わらずの調子である。ただ、俺は街灯の下に蹲っている人影に興味が出た。


 そのまま街灯に近寄っていく。近づいていくとわかったが、どうやら背の低い女性のようだった。


「どうも。どうしましたか?」


 俺が話しかけると、女性は顔を上げた。俺やサヨより少し幼い感じの顔立ちである。


「あ……あぁ……どうも」


 弱々しい声で彼女は俺に答えた。


「その……なんでここで蹲っているんです? 調子が悪いんですか?」


「いえ……調子が悪いというか……動けないんです」


 女性はかなり困った感じでそう言った。動けない……それはつまり、調子が悪いってことではないだろうか。


「おい、何をしているんだ?」


 と、サヨが俺に近づいてきた。俺は振り返る。


「この人、動けないらしいよ」


「動けない……おい、怪我でもしているのか?」


 サヨも俺と同じようなことを聞いた。しかし、女性は困惑したような顔をするだけで、正直に答えようとしていないのは、俺にもなんとなくわかった。


「い、いえ……怪我は……してないんですけど……」


「じゃあ、なぜ動けない? まさか、帰る場所がないのか?」


 急に心配そうな顔になるサヨ。確かに帰る場所がなければ、ここで蹲っているのも納得できる。


「そ、そういうわけではなくてですね……その……怖いんです」


「怖い? 何が? もしかして、私達が、か?」


 サヨが不安そうにそう云う。


「あ~……確かにこっちの人造人間の彼女は怖いかもしれないけど、俺は安全だよ」


「……おい」


 女性を安心させるために言ったつもりだったのだが、サヨに睨まれてしまった。


「い、いえ。アナタ達が怖いわけではないんです……その……怖いのは……」


「怖いのは?」


 そう言ってから女性はなぜかチラリと上空を見た。そして、観念したように先を続ける。


「夜が……怖いんです」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る