第4話 廃墟

 俺とサヨは歩き続けた。歩き続けることは苦ではなかったが、風景は変わらなかった。


 基本的にはどこまでも続く道路。そして、その脇には建物は街灯が点在している。


 変わり映えのない景色……そう思っていた矢先だった。


「あ」


 思わず俺は声を上げてしまう。


「……なんだ? どうした」


「あれ。街かな?」


 俺は前方を指差す。確かに暗い夜空の下に、これまた暗い建物の影がいくつも存在している。


「……ああ。正確には街だった、だな」


「え? 今は街じゃないの?」


「……そうだな。住んでいる人がいなければ、街とは言わないだろうな」


 サヨは少し寂しそうな顔をする。機械のくせに、彼女はとても表情豊かだ。


「行ってみない?」


 俺がそう提案すると、彼女はつまらなそうな顔をする。


「行っても何もないぞ」


「え……行ってないのにわかるの?」


 サヨはなぜかめんどくさそうな顔をした。しかし、その後で小さく頷いた。


「わかった。少し寄ってみよう」


 そういうことで俺とサヨは街に行ってみることにした。といっても、俺達が歩いている方向に街があるので、自然と俺たちは街にたどり着いた。


 道路の脇に点在しているのとは違って、確かに街は建物がたくさんあった。だけど、その全部がまるで死んでいるみたいに静かだ。


「……かなり激しい戦闘があったみたいだな」


 サヨはそう言いながら、建物の壁に残った傷跡のようなものを触っている。


「街の人はどうしたのかな?」


「さぁな……逃げたのか、それとも全員死んだのか……」


「君みたいな人造人間はいないのかな?」


 俺がそう言うとサヨはなぜか俺をにらみつける。なにかカンに触るようなことを言っただろうか。


「……いたとしても会いたくないな。世界がこんなになっても生き残っている人造人間なんてロクなものじゃないだろう」


 ロクなものじゃない……じゃあ、サヨはどうなんだと聞こうかと思ったが、また不機嫌そうな顔をされても困るのでやめておいた。


「ねぇ、あの一番高い建物の最上階、上がれるかな」


 俺は最初から目をつけていた建物を指差す。その建物は暗い夜空に向かって、他の建物より一際高くそびえ立っていた。


「そうだな……階段が崩落していたりしなければ昇れるんじゃないか」


「じゃあ、行こう」


 俺がそう言うと彼女は一瞬めんどくさそうな顔をしたが、すぐに元の表情に戻った。


「……あぁ。そうだな。行くか」


 俺達は高い建物を目指して歩き出したのだった。

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