第12話 T.K トーコ  またまた、上京???

 何やかや有ったが藤子と竜也は呉広町のエフコム広島支店に無事戻ってこれた。

 資料、データを渡してきただけで、早めに戻って良かった。

 あれ以上、東京?に滞在していると、どんな目に会ったか分からない。


 この呉広町のオフィスで落ち着いた竜也は、自分が作り上げたい事への興味に気が付いた。これこそ、自分のやりたいこと。(今は・・・)それは、

 ソーシャル・ネットワーク

 全ての物、人、機械を結び着けたい。(それってIOT?)電話ではない。皆が、特定の誰かだけではなく、不特定多数の誰かに、お願い出来る、命令できる。連絡が出来る。それは藤子の能力を万人に開放するようなもの。

 そこで、竜也は最初、携帯電話、小型コンピュータ(今では、タブレット)に注目した。それと、電話回線の活用にも注目した。しかし、電話回線は、この国では、国家レベルで管理、運営されている。電話線を所有する会社では、部外者は、相手にしてもらえない。申請、許認可と、後にも先に事務処理が煩雑になる。竜也は、そんな電話ではなく、それとは別に、日本国内全てと言って良いほど張り巡らされ、多くの国民、一人一人と繋がるモノ、を創りたいと思った。それは、電線、水道管、下水管、そして、TV、ラジオ電波等を利用する。

 そして竜也は、電線に目を付けた。電気も国策会社が、大体、牛耳ってはいる。しかし、国民、一人一人と繋がりえるものだ。電話線も同じではあるが、電話会社は、国策、役人気質が抜けていない。銀行支店間の通信でさえ、許可、承認申請、検査など国家官僚既得権を持っている役人たちが威張り散らして、中々、話が進まない。セキュリティーとか、盗聴なき安全性の検査ならともかく、書類の書き方のチェックである。ローマ字が違う、宛先名が違う、などと部外者を相手にしようとはしない。国の予算、国民の税金で、最先端研究、光ファイバー通信などと世間を囃し立てているが、自分達の存在意義、権益をかけてのこと。


 そんなことを考えているところへ、竜也に、久々に業務命令が下った。


「今、販売中の小型コンピュータ(パーソナルコンピュータ)を、拡販すること。ライバル会社にシェアを完全に奪われている状況を改善し、自社の販売シェアを伸ばすこと」とのことだ。エフコム社は、小型コンピュータの性能、Dオペレーション・システムの優位性、アプリケーションソフトの優位性を前面に出して、小型コンピュータを販売していた。しかし、その優位性は無くともアプリケーションソフトの開発を小さな会社や学生たちに無償支援し、劣っていると思えるアーキテクチャーも全ての人に無償開示したパソコンメーカーがあった。そのメーカーの小型コンピューターは、趣味、芸術アートの世界で、個人向けに急速にアプリケーションソフトの種類を増やしていた。学生たちや、マンガ、アニメの作り手たちが趣味でつくる、そのパソコンで使えるゲームソフトは増えていった。処理速度、メモリー量などエフコム製に劣りながら、そのパソコンは、あらゆる分野で使用されるに至り、パソコンの普及シェアーにおいては、エフコム社は、雲泥の差を付けられている。


 竜也は、何気に考えるのだった。


業務命令だ。もしかして、初めて仕事らしい仕事を命じられたのではないだろうか?少し嬉しい。自分は、成長したのかも?本社転勤?

と思うのではあるが、もしかして、これは、本社上層部が最初は藤子(トーコ)さんにお願いしたものの、本人には断られ、「メンドクサイ!南郷竜也にでもやらせておいて」などと自分に廻された仕事ではないか?とも思うのである。


「まあ、どうあれ、頑張る!」と思う竜也であった。

 

竜也は、先ず、自分達が行っているデータ入力に目を付けた。と言うか、自分は何気にこれしかやってこなかった。技術をパクッたモノではあるが、エフコム社は、国内、国際的に大型汎用コンピューターのシェアトップとなった。大型汎用コンピュータ、その入力端末(コンソール)はかなりの数がある。その新型コンソールとして自社製パソコンをばらまく。とくに、新聞、雑誌の制作、印刷においては、コンピュータ編集、出力、校正用印刷のコンピュータ化が進んでいる。常に印刷事前、直前の記事、言葉、絵のスピード入力編集が重要なのだ。記事、言語入力端末、高速入力編集機器として小型コンピュータを組み入れてシステムとして販売する。

(自然に、小型コンピュータが売れる)

 この方法で、エフコム社の小型コンピューターは、ある程度、販売台数を伸ばすことが出来た。しかし、使われる絵、写真などのアート、芸術関係者のデータが、他社パソコンで制作された物が多かった。その為、データ互換性のあるメインコンピュータが求められるようになり、エフコム社がメインとする大型汎用コンピュータを奪い取られそうになる始末になったのだ。

 終には、エフコム社の大型汎用コンピュータ側が、他社小型パソコンに合わせる形を取らざる得なくなってしまった。

 そこで、竜也は、自分の力不足、能力不足、努力不足がバレる前に、パソコン拡販を放棄したのだ。世界ネットワークの構築、ネットワーク技術を牛耳る、と言う目標を自分勝手に打ち出し、その方向に動いたのだった。


(誰も期待していないし、命じてもいない)


 竜也は、瞬間移動の能力で、藤子(トーコ)を救ったことに、自我に目覚めたのだ。

(かなり、年齢的に遅いのではあるが・・・)

(トーコさんを守るため、自分が側にいなければならない。この会社で自分の存在意義を高める。会社から捨てられない様にする!)


 ネットワークは、企業、個人を問わず繋がり易さを求められるものだ。

竜也は、手っ取り早く、電力線を使うことにした。以前、電力会社の超大モノを藤子の父親が知っていると聞いたことがある。藤子に業務命令として、アポ取りと商談成立をさせる、と伝える。(お願いする、懇願する)

藤子さんに任せよう!楽勝だ!決まりだ!


竜也は、藤子に、

「東京の電力会社とハナシ付けて来てくれないかな?関東地域一体の電力線、全部を、コンピュータでデータをやり取りする、データを行き来させ流す線にしたいって」

と、業務命令的に言ってみた。竜也は、少々、動揺している。だが、平静を装っている。


「なに⁉それ、私に言ってる?」


「いや、東京に行きたいんじゃないかな?なんて・・・」

 竜也は、心臓が口から飛び出すのではないか?と思った。


「私が、今、東京行ったら、どうなるか、知てるでしょ?本気で言ってんの?」

「いえ、その、私が話を進めるので、付いて来て頂きたいなあ~、なんて・・・」

(藤子が睨んでる⁉) 

「あの、別に私の護衛に付いて来てとかではなくて、単なるカバン持ち・・・」

 藤子の表情は、更に険しくなる。

「カバン持ち⁉、あんたのカバン、持てってか?」

 うろたえる竜也。

「いえ、カバン持たなくていいです。ご自分のカバンだけでも大変ですヨネ。あのマシンガンとか、入っている奴・・・、重いですよネ」


(あ、ガン見の眼力が消えた、優しい眼差しになった?)


「いいですよ、南郷主任、なんでもお命じ下さい」

(⁉)

(あ?イケメン社員たちの帰社か・・・)

「それでは、二日後、午後、電力会社の方と面談、その後、本社に寄ろう」

「ハ~イ、了解で~す」

と、言って藤子は、席に戻った。

 それから少しして、藤子は、父親に電話をかけているようだった。

 竜也は、気が気ではない。他所を向きながら、聞き耳を立てている。

(殺されかねない・・・)


「父ちゃん?東京の電力会社の人に頼みたいことが有るんだけど、明後日あたりの午後に、誰か会ってくれる人いないかな?」

「会長?小難しい爺?」

「あ~、いい人なのね、じゃ、頼むは」

 しばらくして、事務所にかかって来た電話を藤子が取った。父親、倉田源蔵からのようだ。

「あ、有難う、流石、早いネ」

「うん、気を付ける。大丈夫だよ。この前は3発しか撃ってないし、それに、便利な盾と行くから安心して、有難う」


(便利な盾?俺?便利な盾なの・・・)


 藤子が、竜也に手を上げて報告する。

「主任、明後日、3時、関東帝国電力、安藤会長、アポイントとれました!」

「エッ⁉」

このオフィスの全員が耳を疑った。


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