第10話 T.K トーコ Dオペレーションシステム
藤子(トーコ)達は、自動翻訳システムを完成させていた。サンフランシスコからパクッてきた資料を翻訳し、その資料を元に、新オペレーション・システム?(実はACMの最新コンピュータのオペレーション・システムのパクリ)をも作り終えたのだった。
それでも、藤子(トーコ)も、竜也も、相変わらず、データ入力、データベース作成の仕事が続く。
藤子(トーコ)と、竜也。今も、データ入力、データベース作り、プログラミングをさせられているのだが、今回は、大型コンピュータのオペレーション・システムの作成ではなく、Dオペレーション・システムというものの作成らしい。以前のものより、簡単に出来そうだった。それに、またパクリだ。
英文の資料は、竜也の透視と瞬間移動の力を使い、入手した。
実際にはレイノルドの机の上に有った物だ。
レイノルドは、藤子(トーコ)とのテレパスでの会話で、日本のエフコム社が、今度は小型コンピュータのオペレーション・システムをパクってることに気付き、急いで、上司に報告した。
ACM社の幹部は、その情報を知っていた。というより、ある時に誰かに聞いた(太平洋戦争の開戦は仕掛けられたもの)と同じように、そのように導く様なフシがある。
ACM社の幹部から、今後の計画がレイノルドに話された。
レイノルドとピーターで作り上げた小型コンピュータ用のコントロール・プログラムは、
とある会社に小型コンピュータ用オペレーション・システムとして、売ってしまうコト。
現在、開発中の小型コンピュータは、CPUも、拡張ボードも他社に製作させ、ACM社は、この小型コンピュータを発表した以降、ある時期をもって、どこかの企業に小型コンピュータ製造事業を売ってしまうコト。そしてACM社製としては、小型コンピュータを販売はするが、技術情報は全て全世界に公開する。オープンアーキテクチャとし、どんな国のどんな企業でも、マネをして小型コンピュータを製作販売が出来るようにするコト。世界中の企業が同じ物を製造し、販売することを推進し、それらの企業に、身を削り合い、過酷な競争を強いるのだという。
そのような中で、全世界で同じ仕様のコンピュータが広まることを想定して、我々ACMは、他社に先駆けてネットワークで全てのコンピュータを繋げる技術開発に取り掛かる、とのことであった。
この小型コンピュータの商戦に参画するもの全てが、低価格競争に飲み込まれ疲弊してゆくだろう、独自の路線を貫いたモノだけが生き残るだろう。そして我々ACMは、生き残こったその会社を買収し、乗っ取るつもりである。
とのことであった。
レイノルドは、このことを藤子(トーコ)に伝えようか?迷った。しかし、伝えても、藤子(トーコ)にも竜也にも何のことだか?分からないだろうし、藤子(トーコ)と竜也には、将来に渡って何の関係もない事なのだ、そう思えた。
竜也は、藤子(トーコ)の指令通り、全巻そろったファイルの翻訳をし、その記載に従い、Dオペレーション・システムを作り上げた。藤子(トーコ)以外の開発の女子と、その友達全てを巻き込んで。
仕事が終わったことは誰にも言わない、報告しない。藤子(トーコ)の命令である。ある時期までは終わってないコトにするらしい。
竜也は、藤子(トーコ)の命令には、絶対に従う。
反攻すれば、食事に誘われる。お食事は、藤子(トーコ)の自宅であるか、町の店か、何方にしても藤子(トーコ)の子分たちに囲まれることになる。イヤ、自宅だと親分までいる。
藤子(トーコ)には、竜也が仕事を終わったことは伝えなくても、直ぐに分かる。竜也の頭の中は、常に藤子(トーコ)に監視されているも同じなのだ。
しばらくして、藤子(トーコ)が、竜也の席にやってきた。そして、小声で
「例の件、出来たんだ?」
と、竜也に聞く。
竜也は、藤子(トーコ)の目を見て、軽く頷いた。
「後で藤子(トーコ)さんの席に持って行きます」
と言って、竜也は、8冊のファイルと、8枚のフロッピーディスクを藤子(トーコ)の席に持って行った。
藤子(トーコ)には、ナゼ?竜也の仕事が終わったことが分かるのか?
仕事をしている時は、何かしらアルファベットの文字が竜也の頭の中には浮かんでいる。しかし、終えた後で通常モードの時は、なんの思考もない。空なのだ。だから分かる。
頭の中を見なくても分かる。突然、どうにもクダラナイ竜也の思考が飛び込んでくる。お菓子の名前、飲み物の名前、マンガ雑誌の名前、ファッションブランド等々。
数日後、仕事が終わったことは、所属する課の上司に分かることとなった。
「お~い!南郷くん、例の仕事、終わったかね?」
と、上司に聞かれた南郷竜也は、モジモジしながら藤子(トーコ)の顔を窺う。
そこで、
「南郷さんに頼まれた資料、明日にはお渡しできます!」
と藤子(トーコ)が答える。
ほっとする竜也。藤子(トーコ)に軽く頭を下げる。それに目で答える藤子(トーコ)であった。
それから、上司は、藤子(トーコ)に、
「あ~、それで、その資料とデータ、東京の開発本部から倉田さんに持ってきて欲しいそうだ。なんか?品川辺りのホテルもとってくれるそうだ」
藤子(トーコ)には、嫌な思い出がある。
前回も、手伝ってといわれプログラムの最終開発を藤子(トーコ)ひとりでやらされたのだ。
「いやいやいや、私はタダのOLですよ!定刻に来て、オシャベリして定時に帰る、タダの何も出来ない事務員ですよ!東京の開発本部へなんて・・・」
とそこまで話している間に、周りの女子の空気がオカシクなっている。女子たちから藤子(トーコ)に怒りの眼差しが向けられている。
そこで、竜也が、
「課長!私が行ってきますヨ」
と、答えた。一瞬、考えて課長は、
「そうか、じゃ、二人で行って来てくれ。もちろん日帰りで」
少し和む藤子(トーコ)。顔を引きつらせる竜也。
「有難うございます。南郷さん!」
意味ありげな引きつった笑い顔を藤子(トーコ)に向ける竜也であった。
「それじゃ、二日後に呉広駅で待ち合わせということで、後は俺が組んでおくから・・・」
と、藤子(トーコ)に言って竜也は席に着く。
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