第8話 T.K トーコ 新人研修中のお話

 藤子(トーコ)は、新人研修でのOJT(オンザジョブトレイニング)として、金融システム部に配属された。

 藤子(トーコ)は、金融プログラムの制作が、好きでも何でもない。興味も無い。

 ただ仕事の、ついでに行っている、自動翻訳システム、その開発が好きだった。これが、将来、人口知能の開発の基礎になってゆくのである。

 自分の超能力の使い方の調査が出来るのである。

 藤子(トーコ)がナゼに、この様な事に興味あるかというと、自分の超能力の成功した事例を片っ端から、入力し、データベース化して、その成功事例をもとに、自分の能力の操作、実施方法を探し出そうとしているのである。

 自分の操作マニュアル(取説)を作ろうとしている。

 本業の合間に、超大型コンピュータと、データベースを拝借して操作しているのである。

 こんな環境、世界でもめったにない。

 数億円のシステムである。

 いかに、倉田源蔵でも購入はできない。

 かっぱらう、乗っ取ることは、可能かもしれない、と思う。

 だから誰よりもデータベースの構築が速い。

 藤子(トーコ)は、部隊の開発チームからは、えらく重宝がられている。

 藤子(トーコ)は、東京、ではなく、川崎に来た。



 とにかく、大型コンピュータが使用できて、データを溜め込める、そして分析・検索できるところ、それが有れば藤子(トーコ)にとっては何処でもよい。

 藤子(トーコ)は、コンピュータのトラブル、ソフトのバグを解決したら、その後はココに残る気もないことは上司に伝えてある。

 こんなに忙しくて時間がないと、自分の為にやる事が、出来ないのである。

 藤子(トーコ)は、サッサと済まして、呉に帰り、ノンキに空き時間をみつけて、データ分析をしたい。

(早く自分の能力の使い方を解読したい)、と願っている。



 こちらの、プログラムのバグ?も直し、動かしてはみた。

 最初は、なぜ動かないのかが、分からなかった。

 コンピュータセンターに入り込み、徹夜状態で、解析をしていた。

 周囲も、じっと、こちらを観察しているようである。

(何か?おかしい)

 とは感じていた。

 プログラムの概要をレクチャーされ、それを同じように制作するよう言われてはいるが、それは、それで、(なんで私みたいな新人に?)と藤子(トーコ)は少し疑問でもあった。

 それに、既に完全に出来上がったプログラムが、システム内のどこかのメモリー内に存在している様なのである。

(できてるじゃない?)と不思議がいっぱいである。

 プログラムのバグも、誰かがイタズラに書き込みをしたらしい?と思われた。

 しかし、それは仕組まれてる?とも疑問に思ったが、そんなのに煩わされるのはメンドクサイと思いそのままにしておいた。

 予知、読心の能力は使わなかった。

 予知、読心の能力は封印したのだ。

 そして、使えなくなった。

 藤子(トーコ)は、

(サッサとデータ整理をして、コンピュータで自分の能力の分析をしたい!)

 と思った。


 そして、

「バグを直しました」

 では、多分、広島には帰してくれそうにないと感じていた。

 だから、藤子(トーコ)は、与えられたプログラムのコピーも検証して作り直すことにした。

 どうも、この膨大なプログラムは、何か新しいハードウエア上で、動くようになっているらしい。

 いままでの、オペレーションシステムの焼き直しのようでもあるが、ある場所にあるパスワードを入れないと、稼働させたと同時に警報が鳴り響くように作ってある。

 それで、そのパスワードを解析、作り直した。

(これで、帰れるであろう)

 実は、もう一つ、このプログラムには、仕掛けがあるらしい。

 誰が、何のため。

 誰が作ったのか?プログラム履歴でも見ようかとも思ったが、ヤメタ。

 藤子(トーコ)は、

(誰かの暇つぶしであろう)

 と位に考えた。

 ある場所に、あるトリガーワードを入れると、印刷の度に、ACMとばかり印刷される印刷システムになっているのだ。

 藤子(トーコ)は思った。

(ACM?なんだっけ?超、有名なワードのような気がする)

 が、こちらは、わざわざ、トリガーを入れ込む作業が必要であることなのである。

 作った物好きくらいしか、起こせない事だ。

(誰も気づかないであろう)

 ということで藤子(トーコ)は、これもそのままにしておいた。


 そして、金融システム部のトップに、業務完了を報告した。


 バグ直しの内容、

 新プログラムで警報解除のパスワードを入れたこと


 それで、

 藤子(トーコ)は、あっさり、広島・呉に帰してもらうこととなったのだった。

 上司の最後の言葉が、

「ごゆっくり」

 であった。

 本当にそうなれば良いが、今回のオペレーションシステムの件で藤子(トーコ)には、気になっていることがある。

 それが、その後、藤子(トーコ)達を世界的産業スパイ事件に巻き込むことになるトリガーであり、予見する物でもあったのであった。

 藤子(トーコ)が、川崎のコンピュータセンターで使用していた最新鋭の大型高速システムであるが、

(それが、なんで、呉に同じものが設置されているのだろう?)

 と少しだけ気になる藤子(トーコ)であった。


 大銀行でも、手に余るような、最新鋭機種である⁉



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