第3話 サンフランシスコ行くのだ
コンピュータの開発用技術資料、米国版を日本語に翻訳するための原本を、アメリカ、サンフランシスコまで受け取りに行くことになった、藤子と竜也。
一応、竜也は、藤子様に連れて行って頂くカタチをとっている。
竜也は、車で藤子を、自宅、屋敷?要塞?にお迎えに行き、広島空港まで一緒に乗せて行く。
広島都市圏から空港へのアクセスは、山陽自動車道の高速自動車専用道路を通るリムジンバスが主力。道路での事故や渋滞のたびにリムジンバスに運休や遅れが生じる。飛行機は、飛行場に離着陸していても、客は、空港に行けない。という状況が繁忙期にも頻繁に起こるのだった。
広島空港は、元々は広島市街に、ごく近い海辺の場所に存在していたが、1993年に山中に移転させたのである。
正確には山の頂上である。
位置的には主要都市から遠くなったため、利便性は著しく下がった。
竜也は、自慢のBMWの2シータ、コンバーチブルで藤子を、家、屋敷?要塞?まで迎えに行った。少し気取って、自慢しようか、という思いも有った。しかし、倉田藤子の家のエントランス前のガレージに置いて有ったのは、2シータ、コンバーチブルスポーツカーでは、ベンツであり、ブガッティ、ベントレーに、ジャガー、それも、全てピンク色で揃えてあるのだった。
(馬鹿じゃないの⁉)
と、言う位の大金持ちであることは、間違いない。しかし、あの様な車を、何処で、どうやって購入したのか?は、興味が有る。東京でも、日本全国、あんなモノは、なかなか入手は出来ないし、普通、扱ってもいない、と思う竜也であった。
また、家の外の門番達は、どう見てもカタギではない。竜也は、家まで迎えに行くことに、少し?大いに、戸惑った。ナビもスマホも無い時代である。住所たよりの、地図たよりで来たのだ。竜也は、間違えたふりして、素通りしようか?とも思った。が、門番の怖いお兄さん達に、エントランスに誘導されてしまった!
要塞のような屋敷のエントランスに倉田藤子は出てきた。
(どんだけ、永いクルーズの旅に出る気なのだ⁉)と言うほどの荷物を倉田家のお手伝いさんと思わしき人達が、次々に運び出して来たのだ。
(このカッコイイ、スマートな車に、そんなに荷物、詰める訳ないだろう!)
と、竜也は唖然とした。しかし、無理やり2シータのボディの上に、重ねて荷物を縛り上げる。、竜也は、藤子に、この荷物のうち、膨大で多数の普段着、パーティードレス等は仏用ないので持って行かない様に頼み込んだ。
竜也は、以前から感付いていたが、
(倉田藤子って、何者なの?)
と、今更ながら思うのである。大体の事は、分かっているつもり、だけれども。
竜也は、藤子とは同郷なのに記憶が、接点が全然ない。竜也は、大学生になるまでは、女性というものに関心が無かった。男友達にだけに、感心があった。しかし、ボーイズラブでは無い。
竜也は、物心が付いてから、ず~っと、男のカッコよさを追及していた、とも言えた。
少年時代の、南郷竜也にとってのヒーローは、サーファーの香川崇だった。竜也にとっての、推しであり、竜也は、香川崇の追っかけ、であった。何時も、ヒーローの隣には、小生意気な少女がいたようなぼんやりとした記憶は有る。
日本航空、広島発、東京羽田経由、サンフランシスコ行きは、定刻通り16時:45分に離陸予定だ。
竜也は、
(飛行機は自分で予約して、会社に出張交通費で精算します)
と藤子に言い、各々、別々ということにして自分で自分個人の航空券を準備した。
藤子は、飛行機を利用する時は、ビジネスクラスかファーストクラスしか利用したことがない。もちろん、自分で予約などする訳もない。
当然、通常の従業員ではファーストクラスの交通費は、一般の会社では精算できない。
絶対である‼
竜也は、全てを藤子に任せれば良かったのだが、男性としての意地が少しはあった。その時点では。しかし今は、意地など無いに越したことはない、と思っている。
意地や、見栄など不要である。
藤子と、竜也、そこにあるのは、明確なる力の差!
(一緒に僕が予約とってあげる)などと、言わなくて良かった。今、竜也は、そう、思っている。
空港の正面入口に着くなり、空港職員は、倉田藤子に気が付いた。
そして、空港職員は、藤子に、
「いつものラウンジが空いております」
と、言ったのだった。
竜也は、車を空港の駐車場に入れて、藤子に付いて、特別なラウンジに行く。無料で、多種多様なソフトドリンクの他、プレミアムなビール等などのアルコール類も有り、オードブルも有る。味噌汁、スープ等の他、料理も豪華な物が揃っている。
雑誌の評判通りだ。
日本航空の国内線ファーストクラスは、日本航空のダイヤモンド会員用のエントランスで搭乗手続き・手荷物検査が可能なので、非常に空いており、搭乗手続きが混雑する時間帯でも、並ばずにスムーズに通過できる。
(うん、雑誌の情報通りである‼)
と、竜也は思った。
高級感に満ちている中で、快適な搭乗手続きが可能でなのある。
(単なる女性社員の出張⁉ではない)
元暴力団組長、倉田源蔵の娘。ただ者ではないのだ!
JAL便は、18時10分、定刻に羽田に着陸した。そして、19時50分、サンフランシスコ行きに乗り継ぎをするのである。
登場時間まで待つ間は、プレミアラウンジを利用出来た。ここでもビールはプレミアムビールもあり、メゾン・カイザーのパン、それに、おにぎり、味噌汁、スープなど食品も豪華。
竜也はヤハリ、航空券などの予約は、藤子の分も会社で取らなくて良かったと思う。
竜也のエコノミー航空券は、片道、8万円弱で手配申請できたが、藤子の利用する、ファーストクラス航空券は、45万円もする。一般社員では会社清算は、絶対できない金額だ。
竜也は、藤子を、
(コイツ何者⁉)
と、思うことは無い。
(自分のも、藤子様に手配してもらった方が良かった)
と、思えてならない。藤子は、予算とか、旅費規定とか関係ない所の住人なのだ。
羽田での乗り換えの待ち時間も、最高のラウンジを利用でき、快適であった。サンフランシスコのターミナル1に到着するまで、非常に快適な旅を、竜也は、生まれて初めて経験した。
竜也は、エコノミーだったのではあるが、藤子のお付きの者として、藤子の恩恵を大いに享受していたのだ。
竜也の席は、エコノミーではあったが、ファーストクラスから差し入れとして、ワインだの、ローストビーフだの、各種チーズとかが、キャビンアテンドさん(当時は、スチュワーデスさん)が、運んで来てくれる。
倉田藤子様がエコノミーの竜也にと、頼んでくれているのだろう。実際に、藤子が、キャビンアテンダントに、頼んでいた。竜也に気兼ねして、と言うことは無い。
「後ろの方に、南郷竜也という、私のお付きの者が居るので、その辺の余っている物を、持って行ってやって」
と、法外なチップ(袖の下)を渡していたのだ。
日本の航空会社だから出来ることで、海外の、特に米の航空会社とかでは、こうはいかない。オシボリタオルでさえ、客に投げてよこす態度、仕事ぶりなのだから。いかに藤子でも、手におえないであろう。
竜也と藤子は、サンフランシスコのターミナルワンの到着口を出る。
竜也は、藤子の荷物持ちとか、藤子のお付きの人とか、ボディーガードとして、一人で三役、こなさなければならなかった。ボディーガードも兼ねている、と竜也は思っているが、多分、藤子には、ボディーガードなど必要ないであろう。護身用の拳銃を持って、空港のゲートを通り抜けられるのだから。
サンフランシスコ空港、ターミナルワン到着口を出たところで、いかにも日本の女子大生という恰好ではナイ!シックな服装に身を包む、あや子さんが、ワザとらしいキラキラのプラカードを頭の上に掲げていた。
(エフコム)
倉田藤子さま
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