第5話 ママのおっぱい①
「ひ、ひひひひ光くん!?」
もわんと立ちこめる湯気の向こうに、白い肌が浮かび上がる。
華奢な肩から伸びる腕は掴めば折れてしまいそうで、しかしその横の膨らみは寄りかかって埋もれたいほど柔らかそうだった。
重みで少し下がった先にはちょこんと主張する桃色。パフェの上のチェリーのようで、なんとも可愛らしい。
そこからさらになだらかな曲線を描き、と目線を下げたところで、止める。
どうして日ノ宮さんはなにも身につけていないのだ。俺はいったいどうして彼女の身体を静かに眺めているんだ。
「......ん......くん」
目の前の日ノ宮さんが俺を呼ぶ。
なぜか真っ青な顔をして。
「......るくん......かるくん!」
どうしたというのだろう。
こんなに必死になるなんて。
「......ん、日ノ宮さん。またバスタオル忘れたのか。意外とおっちょこちょ......痛っ!」
「光くん、起きて!」
横腹に鋭い一撃。
隣を見れば、日ノ宮さんがやっぱり青ざめた顔でこちらを見ていた。その身体は裸、ではなく、紺色の制服に包まれている。
「あれ、なんで服着てるんだ?」
「光くん、あなたはいつから日ノ宮さんの裸体を望むようになったのですか」
頭上から氷河よりも冷たい声。
同時に細く綺麗な指が机に置かれる。
これは、確かにヤバそうだ。
机に置いたのとは反対の手でこめかみを押さえながら、学級担任は深いため息をついた。
「週明け早々居眠りだなんて、よほどお楽しみだったようね。でもその分、お勉強も楽しまないと」
すっと目を細めて、背を向ける。
二十代半ばにも関わらず、その仕草はどことなく艶っぽい。むっちりとした肢体を包む黒のパンツスーツが色香をより一層濃くしていた。
「もしかして、俺寝てた?」
「もしかしなくても、寝てたよ」
去っていく担任を横目に日ノ宮さんは答える。
呆れているようだが、頰が少し赤い。
俺はさっきの夢を思い出し、慌てて弁解する。
「あ、あの、別に裸を見たいとか、胸を揉みたいとか、そういうことは考えてないからね」
「む、むむ、胸!?」
「あ、や、今のは例えで」
守るように自分の身体を抱く日ノ宮さん。
ベストを着ていても分かる豊かな膨らみ。
それが押さえられたものだから、上から下から溢れ出そうで。あ、視線が痛い。
「そ、想像するのは勝手だけど、授業中に寝るのはよくないよ」
「......普通逆じゃない?」
そう言いながら、なおも腕の力は弱めない。
日ノ宮さんはかなり警戒しているようだ。
当たり前か。
昨日あんなことがあったんだから。
ふと胸を隠す日ノ宮さんの右手にシャーペンが握られていることに気づく。
さっきの脇腹の痛み。
......これは相当恨まれているかもしれない。
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