きみと話せば
月雨新
#1 前置きとして
私の中には私がいる。
当たり前かもしれないが、私としては当たり前ではないと思っている。例えばあなたは何かを決めるとき、それを決めたのが「自分」であるかという確認はしないだろう。決定の瞬間であれその後であれ「これを決定したのは何者でもなく、自分自身だ」とか「今の決定は私じゃない誰かに依るものだ」などと考える人は少ないのではないか。私個人の見解としてはそうだ。実際はどうだか知らないが。
つまりあなた、いや世界の中の多かれ少なかれ一部の人間は、決定を下したのは紛れもなく自分自身であると信じて疑わないのである。これはとても高貴で素晴らしいことだと思う。皮肉ではなく本当の話だ。そもそも自分は自分であり、その「中」というものすらもなく、自分の中に自分以外の人間が、時には矛盾している人間が存在しているなどとは夢にも思わない。知らぬが仏、天真爛漫に生活できる。ある意味の倖せとしてはそうだ。
ところであなた、いや君は、存在しうる事実のことを都合よくファンタジーに変換してはいないだろうか?ジキルとハイドを指さして「面白い」と言うわりには、君の隣の人物がジキルかまたはハイドであるとは考えないじゃないか。
つまり、ジキルもハイドも存在しないものだとばっかり思っている。違うかな?
いやいや、違ったらいいんだ。違ったらいいのだけれど、違わなくても叱りはしない。べつに今更言うことでもない。
だけれども、考えてはみてほしい。心の中がシェアハウスになっている人間が、ほんとうにいるということを。
そのどれもが私そのものであるのだから、全く面倒なことこの上ない。
きみと話せば 月雨新 @nomoon_Arata
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。きみと話せばの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
中途抄/月雨新
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 2話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます