第5話 End

短時間寝て起きて、短時間寝て起きて…

何度繰り返しただろう。5時間が過ぎていた。

連絡が、一切ない。


あれから、電話もしたが応答なし。

なにか、あったのか。


彼に会いたい。


その想いしかない。

でも、会いに行く術はない。

もう近くまで来ているというのに。

彼のもとへ行く情報が、ない。


「会いたい…よ…」


不安がでかくなる。

会いたい。その思いだけできてしまった自分が悪いのか。


もしかしたら彼の近くに来れているかもしれない。

ふと、思い立ち近場の目印を伝えた。


『ここに、いるから。もし近くなら、教えて。』


お願い。

反応が欲しい。

少しでも、反応があれば。無事なのが分かれば…


【ここにいる】そう伝えた以上、自分が動いてしまったら意味がない。

ここから動かずにいよう。

もし連絡があった際も、ここからどう動けばいいのか、分かりやすいはず。


気温も落ちてきて、肌寒い。

毛布を抱き寄せ丸くなる。


もう一度、目を瞑ろう。

そして起きたら、きっと連絡が来るはず。

そう信じながら、眠りに落ちた。



―――2時間後。


騒音で目が覚める。

先程までと違い、にぎやかな感じ。


一切人などいなかったはず。

ふと目を開けると、車を覗きこむ瞳と目があった。


覚醒、と同時に、思考停止。


その覗きこんでいた瞳は無数。

口角がくっと上がるのが分かる。


「…ひっ…………」


声にならない声。

言葉が、叫びが喉に張り付く。

硬直してしまい、一切体が動かない。


逃げなきゃ。


コ ロ サ レ ル


本能がそう告げる。

早く。

早く早く早く早く。


がたがたがたっ

ガチャ、ガンっ


車のドアを開けようとする手。

車体を蹴る音。

揺れる、車体。


何か、外で話している。

四方を囲まれている、逃げなければ。

でもどうやって?


ガンッ、ガシャン!!


「…っ!!!」


後部座席の窓が割れる。

伸びてくる、無数の手。

同時に鍵を開けられ、腕をつかまれる。


「…ぃやっ…!!!」


抵抗もむなしく、外に引きずり出される。

怖い。それしか、なかった。


「おーいたいた。」

「こんなやつかよー。」

「ヤれるだけいいだろ?」

「それどっちの意味だよw」

「えー、そりゃ…」


「「両方ww」」


多重音声。

誰が何を喋っているのか。

何の事を言っているのか。

理解が追い付かない。



理解をしたく、ない。


「ほら、まだ時間あるんだ。たっぷり楽しもうぜw」


顔を近づけてくる。

嫌だ…顔を逸らすが髪をつかまれ、それすらもさせてくれない。


あぁ…もう。終わりだ。

ごめんね。

キミに会いに来たのに

キミと一緒にいれなかった。


「たぁくさん、愉しませてくれよ…?」

「おいおい、早くヤっちまおうぜ。」


服を破られ、何人もの男に輪わされ、

意識がとんでも犯され続けた。

もうどうなったのか、分からなくなったとき、

呟いた一言。


「コロシテ…」


それが引き金になったのかなんなのかわわからないが

男たちは笑いながら私の四肢を切り落とし

内蔵を引きずり出して、殺して愉しんだ。


ごめんなさい。

キミのもとへ行けなかった。

最期の最期はキミのもとで。と言ったのに。


PiPiPiPi…


何かを思い出したかのように鳴る携帯。

暗転する視界の中最後に見た文字。

その言葉は、絶対に、忘れない。


『楽しかったかい?元より俺はお前なんか好きじゃないんだから。

 地球最後の日まで一緒にいたいわけ、ないだろう?』





……Bad End.

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世界が終わる瞬間(とき) 月影 湊 @Rion-raccoondog

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