第5話 僕達の未来
帰り道、僕とアリスは歩いていた。路地を歩いているとトラックが走ってきたので車道側にいるアリスを手で引っ張り歩道者側に入れた。
「な、なにすんのよ」
「車道側は危ないだろ、アリスはまだ生まれたばっかなんだから、もしはしゃいで車にひかれたら元も子もないよ」
「子供扱いするなぁ!」
まったくこいつはすぐすねるな、やれやれ。さっさと家にでも帰ってじいちゃんに一応お礼でも言っておこう。
家にもう着くな、なんだろうどうも人の声がする。ここを曲がるともう僕の家だ。
角を曲がり僕の目に飛び込んできたのはとんでもない光景だった。
「い、い、い、家が火事になってるぅ〜!!!」
ど、どうしたらいいんだ。まず何を確認したらいい。そうだ中に誰かいるのか?家のガレージには自転車はない、まだ母さんはパートから帰ってきてない!
じいちゃんがまだいるかもしれない。寝るっていってたしな、なんで火事が起きたんだろう。もしかしたらじいちゃんまたタバコ吸いながら寝たんじゃないだろうな!
まだ消防車は来ていない仕方ない。
僕は火が届いてないガレージにある蛇口で水を浴びて家に飛び込む事にした。
「ちょっとあんた!何する気なのよ!」
「たぶん中にじいちゃんがいる、だから助けにいくんだ」
「あんた人間でしょ、人間がこんなか入ったら一瞬でまるこげよ!」
「ごめんアリス、僕は行かなきゃ、すぐ戻るから!」
こうして僕は火が廻っている家に飛込んだ。
「じいちゃん!大丈夫か!おーい!」
声は聞こえない。奥の部屋だからな、くそ。
じいちゃんの部屋の扉のノブを回した。しかし扉が変形しているのかなかなか開かない。
「おーいじちゃん寝てるのか!寝てるなら起きろ!」
その時僕の足元に影ができ、見上げてみると家の一部の破片が降り注いで来た。
僕は目をつむり、一瞬どうなったかわからなかった。
「相変わらず馬鹿なんだから」
意識がぼんやりする中、誰かの声が聞こえた。
「……ア、アリスか?」
「まったくあんたは人の事ばかり心配して、でも嫌いじゃないわよそういうところ」
「……こんなとこにいたら君が、アリス溶けてしまうぞ」
「大丈夫よ、私の服は冷却装置がついているっていったでしょ。博士は助けるから、あんたはちょっとゆっくりしてなさい」
僕はケガでもしたのか意識が遠ざかっていった。
目の前が白い。僕は白い壁を眺めている。どこなんだろうここは。
僕は起き上がるとベットの上にいた。どうして僕はこんなところに。
次第に意識がはっきりとしてきた。そうだ、家が火事にあって。そうだ、じいちゃん、アリスは大丈夫なのか。
「起きたようじゃの」
隣をみるとじいちゃんがいた。
「じいちゃん、ここは?」
「病院じゃ、家が火事になってワシらは救急車で連れて来られたんじゃ」
「無事だったんだね」
「どうやらワシが寝タバコをしていたらしくてな」
「じいちゃん、だから寝る前にタバコはダメって言ったろ。でも無事で良かったよ」
「おかげさんでな、お前と……アリスのおかげじゃ」
「アリスは?」
「…………」
「じいちゃんアリスは!?」
その時どこかから声がする。
「オサム」
「?」
「こっちよ馬鹿オサム」
「?」
「こっちだってば!」
ベットの脇をよく見てみるとじいちゃんの隣に小柄な子供がいる。ソフトクリームを食べている。
「君は?」
「あんた私を知らない子供だと思ってるでしょ。火事のせいで溶けて縮んじゃったけどアリスよ」
「君がアリス?……良かった」
「な、何がよ」
「姿は変わってしまったけど無事だったんだね」
安心すると自然と涙が出てきた。良かった、本当に良かった。
「な、何泣いてるのよ、無事で当然でしょ。アリスなのよ」
「その強めな言い回しを聞けて安心するよ」
「私は火事なんかでやられやしないわよ、だってまだあんたに食べてもらってないんだから……」
「なんか言った?」
「なんでもないわ!」
「そうじゃ修、そろそろ母さんも病院に到着するって言っていたぞ」
「あとタチバナにも連絡しておいたわ、今度お見舞いにきてくれるって言っていたわ」
「え?橘さんが!」
今日は色々あったがタチバナさんとも話せたし、なんだかんだいい一日だったかもしれない。
「オサム顔がニヤついてるわよ、まったく」
「何怒ってんの?」
「知らない!」
こうして十五歳のバレンタインデーは多々な出来事に巻き込まれ、忘れようにも忘れられない日になった。
それにしても家が燃えてしまったが、退院したら僕らはどこに住むんだ。でもきっとどうにかなる。
だってまだ母さんやじいちゃん、僕をかき回しじっとはさせてくれないアリスがいるのだから。
チョコーレートガールに迫られて ぴで @pide
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