第4話 三人なんだか意気投合

 アリスと橘さんはお互い目が合い固まっていた。


 「あっ」


 二人同時に声を出した。


(この顔はアリスにそっくり、こいつがオサムが好きっていうタチバナね)


「ちょっとあんた!うちのオサムに近づくな!こいつはモテないんだから勘違いするから近寄っちゃだめ!」


 アリスはそういうと僕をベンチから引っ張り上げた。しかも頬をふくらませ、プンスカしている。どういう事だ?


 橘さんはというとゆっくり立ち上がり、こっちに近づいてくる。


 橘さんはアリスと向かい合わせに立ち、同じ顔だからか波長が合うのか、鏡の中の自分の様に互いに同じ動きをした。


「あなたは?」


「私はアリス、あなたを元にしてモゴモゴ!」


 僕はアリスの口を塞ぎ、ややこしい事を言わせない様にした。


 「この子はアリス、うちにホームステイに来ているんだ」


「修君の家に?そうなんだ。それにしてもなんだか不思議、私に似ている気がする」


 ギクッ!


「まぁ世界に三人は似ている人がいるっていうからね、偶然じゃないかな、はっはっは」


 僕は無理やりごまかした。


「え〜んえ〜ん」


 僕達の騒いでる目の前で、小さな子供が泣きながら歩いていた。


 僕はその子に駆け寄り、話しかけた。


「どうしたの? 何かあった?」


「お母さんとはぐれたの〜え〜ん」


 こりゃ遊んでる場合じゃないな、この子の親を探そう。


「二人とも、この子迷子なんだって。この子の親を探してあげようと思うんだ」


 橘さんはうなずいた。


「そうね、それがいいわ」


 そういいその子の手をつないだ。


 アリスもうなずき、


「まったくアンタは仕方がないわね〜お人好し。付き合うわよ」


 そういうとアリスは自分のツインテールの毛先を抜くと、板チョコに変化しその子に渡した。


「名前は?」


「かすみ……」


「これでも食べて落ち着きなさい。甘くて美味しいわよ」


 アリスの何もないところからチョコを出したのはわからない人が見るとさぞビックリしただろう、というか僕もビックリした。


 しかし橘さんとかすみちゃんは意外なリアクションだった。


「アリスちゃんすごい!」


「お姉ちゃん今の手品?」


「あんた達何言ってるのよ、アリスはチョコでできていてモゴモゴ!」


 僕は再びアリスの口を閉じた。


(オサム、何すんのよ〜)


(余計な事を言わなくていいんだよ)


 こうして僕達は気を取り直してかすみちゃんの親を探した。


 僕達四人が歩く中、どうもみんなの視線がこっちに向いている。


 アリスと橘さん、この世の絶世の美少女とも言える二人がいるのだ。周りが騒ぐのも仕方がない。


 僕達御一行が騒ぎを立てていると、注目を浴び、女性が飛び出してきた。


「かすみ!」


「ママ!?」


 かすみちゃんはどうやらお母さんと会えたみたいだ。


 僕は何もしていないのに、お母さんにお礼を言われてしまった。


「オサムってダサいのに、優しいよね」


「そうね、修君はいい人ね、学校では大人しいけど色んなところに気がきいて私も見習わなくちゃって思うの」


(今日生まれたばかりだから仕方ないけど、タチバナはアリスが知らないオサム知ってるんだな)


「タチバナ、スマホの番号教えて」


「アリスちゃん、私と友達になってくれるの? いいわよ」


 僕がかすみちゃん達を見送っているとアリスと橘さんは楽しそうに笑っていた。何の話をしているのやら。


「アリス、そろそろ帰ろうぜ」


「まだ夕方よ。もう?」


「冷えてきたのにアリスちゃんは元気ね」


 今日初めて触れ合った様な三人なのになぜか、いこごちの悪くない空気だった。


 橘さんは友達と合流するため休憩所へ向かい、僕とアリスは帰る事にした。


「アリス、初めての外はどうだった?」


「まっ、あんたが連れてきた場所にしては良かったわ」


 ん〜こいつは素直じゃないなぁ。もっとこうストレートに感謝できないものか。


 まぁ今日は色々あったが楽しかった。家に帰ろう。


 しかし家に帰ると、とんでもないことになっていた。

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