「喰い啜る者…」

低迷アクション

第1話

「家庭ゴミの大半が残飯ゴミだ。酷いのは飲食店のゴミも一緒に出されてる。

勿論、違反!まぁ、とにかく、どんな美味いモンだって、混ざって、皆ペースト状になれば…酷い見た目に酷い匂い…特にカレーと…」


胸が悪くなるような彼の言葉を遮る。友人はゴミ収集作業員…酒を煽る彼の話は続く。


「一件、ずば抜けてなのがあってな。残飯ゴミが必ず20袋以上、悪臭&ドロドロだけど、民家が離れてて苦情なし。犯人は近くの飲食と飲み屋、苦情は言えない。そこを俺は

担当してた…だけど…」


友人の顔が曇る。


「無くなった。あれほどあった残飯の山が…正確には、袋はあった。でも、中身が全部抜かれてた。カラスとか猫、犬でも無理だ。


だから不気味だった。いや、仕事は楽になったけど…ホント、不気味なままで終わらせとけば良かった…」


震えた彼は続ける。


「俺、地元だから、その場所は良く知ってた。残飯山なのも有名。多分、ゴミ出す奴は以前と変わらずに出してる。夜中にコッソリな。それが朝前には消えている。だから、こないだ、飲み会帰りの夜に寄ってみた。」


ただ、ちょっと覗くだけだったと言う。


「そしたら、アレがいた。裸で真っ黒、ガリガリで、腹だけ突き出してる。鬼太郎に出てくる餓鬼みたいな奴…黒いのは介護施設でバイトしてた時に、同じの見た。あれは全部垢だ。」


友人が口を抑える。こちらも同じだ。


「そいつが喰ってた…いや、啜ってた。袋裂いて、ストロー吸うみたいに口すぼめて、

腐りきった残飯、吐しゃ物、全てドロドロの液体を啜ってやがった。でも…」


食欲が無くなり、箸を置く。


「腹がゴロゴロ鳴ってんだ。何袋も食ってるのに、朝の様子じゃ全部食ってる。それでも腹が減る。真っ黒の顔に涙が光ってた。でも、口はずっと動いてる。最後まで…おっかねぇよ。ありゃ一体何だ?」


勿論、わからない。友人も頷く。元々、答えを期待する訳じゃなかったようだ。


「でも、怖いのは、やっぱり人間かもな?ゴミ出してる奴にしてみれば、何でもいいんだよ。アレを見ていたって、見ていなくても…自分達の出したゴミを片付けてくれりゃぁよ?

テメーの都合を解決してくれば何でも…俺達でも、アレでも…」


一気に捲し立てた彼は笑う。


「こんな話、全然関係ないかもしれないけど…何だか、俺達絶対、天国には行けないよな?」


泣き笑いの彼に、返す言葉が無い。返事に詰まった自身の視線はテーブルに残された食品の山で静かに止まっている…(終)

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