第566話 屋上の魔法使い3


「ところで」


 と、完全に誤解したままのナターシャは俺から若干広めに距離を取りつつ、


「こんな朝から屋上に来てどうしたんですか?」


 と尋ねてきた。

 そんなに警戒されると傷付くぞ……。


「ただの巡回だよ。久しぶりだから点検も兼ねてな」

「はー、なんだか支配人みたいですねぇ」

「支配人だっての」


 なんてこと言うんだこいつは。


「あはは。すみません。最近ユーマさんずっと留守にしてましたし、その間はアイさんが実質支配人って感じでしたので、つい」


 誰がいなくても適切に回るのが良い組織だと思っているので、悪い話じゃあない。


「ナターシャは湯沸かしか?」

「はい!」


 そういった意味ではこの魔法使いの少女は替えの効かないポジションだ。ウチの売りである浴室にお湯を供給できているのはナターシャの魔法があってこそなのだから。この子が「ちょっと長期休暇いただきます!」と言い出したりした日にはもう大変だ。考えたくもない。


「なんですか? 私の事変な顔で見て……あっ!? もしかしていやらしいこと考えてませんか!」

「ねえよ! いい加減その発想から離れろ!」









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