第556話 事故リスク懸念。


 魔法使いを雇うっていうのは――


「――ナターシャみたいに?」

「はい」


 アイは小さく首肯。額が俺の胸元にめり込む。

 ナターシャは湯沸かしに特化した魔法使いだ。宿ホテルの屋上にある貯湯槽の水温調整を一手に引き受けてくれている。彼女がいてくれないと、お湯が出ないというビジネスホテルにとっては致命的な問題が発生する。


 異世界こっちの宿はそこまで設備面が進歩していないので、お湯どころか水があればすごいくらいだ。お湯が出なくても問題にはならなそうではあるが、客室でお湯が自由に使えるというのはうちのアドバンテージのひとつなのでやっぱり問題なのだ。


 それはさておき、


「エレベーターの動力確保を魔法使いでする、ってことか?」

「はい。念動系の魔法使いを雇用したいと考えています」

「ふーむ……」


 提案自体は理解できる。ただし懸念もいくつかある。


 ①重量数百キロを地上10階まで上下移動させられる魔法使いの雇用費用。

 ②その魔法使いの魔力量(一日もたないようでは話にならないため)。

 ③交代制にするとして何人雇う必要があるか。

 ④魔法の制御に失敗した時の事故リスク。死人がでかねない。


 あとはそうだな……。


「その念動系魔法使いの宛てはあるのか?」

「ございません」


 じゃあ駄目では?



 




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