第519話 講和


 高杉はぜえぜえと呼吸を乱していた。時折、血を吐いてさえいる。

 吐血。

 高杉のかつての死因は結核だったな……。


 それまでの戦闘と、エリザヴェートによる酸素供給の低減は高杉の体に予想以上の負荷を与えているようだった。


「降伏か死か。いいね。いかにも戦争だ」


 雨でぬかるんだ地面に膝と手をつきながらも、高杉は不敵に笑っていた。


「降伏はしない。死ぬのもごめんだ」

「……」


 身勝手な放言をエリザヴェートは黙って聞いていた。だから俺も何も言わない。


「戦場を移そうではないかね。血と泥濘に塗れたこの場所から、妥協と寛容の境目の曖昧な机上に。まあ、なんだ。つまり、停戦交渉というやつだね」


 回りくどい物言いではあるが、


「講和したいってことだな」

「そうとも言えるね」


 さて、エリザヴェートの返答はどうだろうか。


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