第520話 終結
「帝国は侵略を繰り返し、我が国の民の命を幾度も脅かしてきました。版図を拡大するなどという利己的極まりない理由によって」
エリザヴェートの言葉は恨み節というよりも事実を淡々と述べるような調子だった。
「私個人としては帝国の所業を許すことはできませんし、手を取り合うなどあり得ないことだと考えています」
一度言葉を区切った。
俯き加減の表情は苦いものを飲み下すようなそれ。
「ですが、これは私見であり私怨なのです」
流石、というべきか。
顔を上げたとき、エリザヴェートの顔には負の感情は一切無かった。強く握り込んだ右手は真っ白になってしまっていた。自身の、溢れんばかりの感情を握り潰しているのだろう。
「我が国の未来のために、今ここで過去を清算しましょう。勿論、帝国の未来のためでもあります」
玉座をの簒奪さえ企てたエリザヴェートがよく決断したものだと思う。この場で高杉を斬り捨て帝国軍の掃討に突き進むという判断を下すよりも余程驚いだ。
「私からは以上です。細かいお話はトップ会談でもなさってください」
「承知した。ご厚情感謝する」
「ではユーマ様、あとはお願いしますね」
ふう、と息をついてエリザヴェートは俺に微笑みとともに残務を丸投げした。この兄妹は俺を何でも屋か何かだと思っているに違いない。
だがまあ、
「了解だ。お疲れ様」
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